概観
ついに原子分野からボーアモデルが出題されましたね。
公立校の現役生は物理の授業進度がぎりぎりで準備不足の人もいたのではないかと危惧していますが、問題はたいしたことないかも。
よく考えられた問題もありますが、典型的な問題も多数。共通テストのコンセプトはどこへ?
ケアレスミスに注意。
- 難易度 原子分野が取り上げられました。ちょっとこの分野の得点率が落ちそうな気がします。
他の問題では、かなり簡単な問題も結構たくさんありましたので、
差し引きちょっと易しめかな?? - 問題数 一問減少 いつも思うのですが、配点が高い!高すぎる!!
一問5点など、他教科ではあまりないのでは?
2点3点の問題をもっと入れることは無理なのでしょうか? - 時間 考え込むとあっという間に時間が過ぎますよね。
そして焦る。そうならないように普段から練習しておきましょう。
一言 センターの時もそうでしたが、物理などの理科の専門科目はいつもいつも最後の最後にテストがあります。何とかならんのでしょうかね。たまには時間帯・日にちを変えていただけないでしょうか。
2022年 共通テスト 物理 解説
第1問
問1
おなじみの波動の「強め合う・弱めあう」条件ですが、ここでは波源の位相が逆であることに注意します。
波源が同位相で振動している場合は、
- $|l_1-l_2|=m\lambda$ ・・・強めあう
- $|l_1-l_2|=m\lambda+\dfrac{1}{2}\lambda$ ・・・弱めあう
ですが、この問題では逆転して
- $|l_1-l_2|=m\lambda$ ・・・弱めあう
- $|l_1-l_2|=m\lambda+\dfrac{1}{2}\lambda$ ・・・強めあうとなることに注意しましょう。
したがって答えは ② の $\left(m+\dfrac{1}{2} \right)\lambda$ ですね。
難易度 易
問2
これはこのブログでも紹介しています(物理のクイズ)し、小問対策プリントに載っています。
これは予備校的に言うと「的中」?でしょうか。(まあ、よくある問題ですが・・・)
- 2
物体がレンズと焦点の外側にありますから倒立実像がスクリーンで観察できます。上下逆になるのと同様に左右も逆になるはずです。
なぜって??
全体を回転させてみてください。上下も左右も同じことです。
したがって、上下が逆で左右も逆のものを探します。
答えは ③ です。難易度 易
- 3
これはもうばっちり小問対策プリントからそのまま出ています。
レンズをこのように覆っても像は欠けません。光量が減って暗くなるだけです。
答え ③ 「像の全体が暗くなった」 難易度 易
なぜかって?
矢印の上下から出る光の線がそれぞれスクリーンまで描けますよね。したがってスクリーンに像は映ります。
しかしやってくる光の経路が少なくなるため暗くなるのです。
問3
モーメントの問題です。まず力を描き入れます。円盤の重力は重心から描きましょう。
この場合、図のなす角を $\theta$ としています。図のCを中心としてモーメントの式を立ててみましょう。次図を参考にしてください。
Cまわりのモーメントだから $T$ は考えなくてもいいですね(0になる)。
したがって、
$Mg\times x\cos\theta = mg\times (d-x)\cos\theta$
$x=\dfrac{m}{M+m}d$
答え ② 難易度 易
問4
よく見る典型的な問題です。
重要な事項・・・内部エネルギー $U$ はその絶対温度 $T$ だけで決まります。
したがって比例定数 $k$ を適当におくと $U=kT$ で示されます。
つまり、答えはA B C 点の温度の高さの順を考えればOKです。
ところで等温変化の場合、ボイルシャルルの法則 $\dfrac{PV}{T}=$一定 で $T$ 一定ですから、$PV=kT=$一定 になります。つまり、等温変化では図のような等温曲線が描けます。
この記事を参考にしてください。気体の法則 ボイル・シャルル 状態方程式
$PV=kT=$一定だから、上の図のようにグラフの右上へ行くほど温度が高いと考えてOKです。
さて、問題の図で、BC間は断熱変化であることに注意して等温曲線を描いてみます。
注:B→Cへ行くときは断熱膨張しているので温度は下がります。
各点の温度を $T_A$、$T_B$、$T_C$ としてやると、
$T_A<T_C<T_B$ ですから、
$U_A<U_C<U_B$
となります。
したがって、
答えは ② 難易度 易
問5
典型的問題ですね。難しくはないはずです。教科書の「問い」そのまま?という感じです。
図で導線1が導線2の場所に作る磁場の方向。導線2が受ける力の方向と大きさを考えます。
- ア 導線1が導線2の場所に作る磁場を考えますから、導線2はとりあえず関係ありません。
右手の法則(右手で「いいね」をつくります)
親指の向きが電流向き($I_1$)で指の向きが磁場の向きですから導線2の場所につくる磁場は(c)の向きです。
- イ フレミングの左手則を使います。
この場合、導線2が受ける力ですから、アの導線1による磁場と導線2の電流だけを考えればOKです。
磁場向き(中指)は(c)、電流向き(人差し指)は $I_2$ の方向、力の向き(親指)は(d) - ウ $F=IBl$ から考えます。ここで $B=\mu_0H$、 $H=\dfrac{I_1}{2\pi r}$ ですから、
$F=I_2\left(\mu_0 \dfrac{I_1}{2\pi r}\right)l$
したがって答えは ⑦ 難易度 易
第2問
問1
こういうグラフ選択問題は何となくエイヤッと決めてしまう人も見かけます。しかし私の経験上、グラフ問題は要注意です。人の直感など怪しいものです。(物理のクイズ「直感は正しいか」シリーズをやってみてください。)
時間がゆるす限り、式などを使って理論的な考察をしましょう。
問題から、抜粋します。
「ある時刻の物体の速さ $v$ は、その時刻に物体が受けている力の大きさ $F$ に比例し、物体の質量 $m$ に反比例する」
という典型的なミスコンセプション・チルドレンズサイエンスの一例です。
これを式で示すと、比例定数を $k$ として
$v=k\dfrac{F}{m}$
ですね。この式で示されるグラフを探せばよいのですが、グラフの縦軸・横軸を確認しましょう。
思い入れや勘違いということもありますから、慎重に。
ここで
$v \rightarrow y $、$F \rightarrow x$ としてみると、
$v=k\dfrac{F}{m}$ ⇒ $y=\dfrac{k}{m}x$
$m$ が大きいほど傾きがゆるくなります。
$m\rightarrow x$、$v\rightarrow y$ としてみると
$v=k\dfrac{F}{m}$ ⇒ $y=kF\dfrac{1}{x}$
反比例のグラフです。$F$ が大きいほどグラフは右上に向かいます。
以上から、該当するものを探しましょう。
つまり、そのようなグラフは ④ です。
答え ④ 難易度 易
問2
基本的な事項を聞かれていますが、そのような場合は落とし穴がないか慎重に。
- 8
力一定だから ばねばかりの目盛りがいつも同じでなければなりません。
答え ① 難易度 かなり易
- 9
いろいろな大きさの力で引っ張って、力の大きさと速さの関係を調べるという実験の条件です。
ここでは質量の条件を同じにすべきです。
答え ② 難易度 かなり易
問3
Aさんの仮説をもう一度思い出しましょう。
「ある時刻の物体の速さ $v$ は、その時刻に物体が受けている力の大きさ $F$ に比例し、物体の質量 $m$ に反比例する」
でした。
これは、ミニカーを押して遊ぶ幼児をイメージすればいいでしょう。
「幼児がミニカーを一定の力で押す場合、押している間はミニカーが一定の速さを保っている」・・・という場面を想像します。そして押すのをやめるとミニカーは減速して止まりますね。
だから、幼児は「速度を一定に保つためには、速度に応じた力を一定にかけ続ける必要がある」・・と信じるのです。
この実験ではばねばかりの値を一定にすることで、一定の力をかけ続けている・・・という設定です。
図2でからわかることは、ある時刻に一定の力を受けている場合、速さは一定ではない・・・ということが明確です。
したがって
答えは、 ④ 難易度 けっこう易
というか選択肢からみても ④ しかないですね。
問4
これもグラフ選択問題ですが、やはり式を立てるなりして理論的なバックグラウンドを大切にしたいところです。
問題から
図2を運動量と力積のグラフに描きなおしたときの概形は
物体の運動量の変化=その間に物体が受けた力積
という関係を使って考えます。
では、物体の運動量の変化=その間に物体が受けた力積 より立式してみます。
最初の速度 $v_0$、力 $F$、後の速度 $v$、物体の質量 $m$ とします。始まりを $t=0$ として、
$mv \:-\: mv_0 =F t$
ここで注意すべきは $F$ が一定値であるということです。
したがって、
$mv=Ft + mv_0$
ここでグラフの縦軸が運動量、横軸が時刻であることを考えて
$mv \rightarrow y$ $t \rightarrow x$ のように書き換えてみます。
そうすると、最初の運動量を $mv_0=C$(定数) とでもおくことで次のようになります(最初の運動量はまちまちです)。
$mv=Ft + mv_0$ ⇒ $y=Fx+C$
すなわち、直線グラフで傾き $F$ がすべての場合で同じものを選ぶ・・・ということです。
よって、答えは ④ 難易度 普通
問5
運動量保存則の問題です。
文中に水平方向の運動量の和は保存する・・・と明記されています。
(台車であるこということで床と台車の間の摩擦は無視できるということです)
台車と小球を一つの系とします。
系というのは、ひとまとめで考える閉じた世界?みたいなものだと考えましょう。
運動量保存則より、系に対して外からの力(外力)がはたらかなければ、
運動量の総和は常に保存されます。
水平方向にはこの系に外力がはたらきません。したがって、この系の水平方向の運動量は保存されています。したがって水平方向の運動量保存則をたてます。
小球はたとえ空中でも、水平方向の速度は同じですから、どこにあろうと、台車と同じ水平速度を保ちます。
(水平方向の運動量の和は保存する ⇒ 空気抵抗がない・・という設定)
よって、
$(M+m)V=MV_1+mV_1$
これから、 $V=V_1$ ちょっとシンプルすぎて心配になる人もみえるかもしれませんね。
心配なら時間の許す限り見直しましょう。
答えは ① 難易度 易
問6
さて、問5のノリでエイヤッ・・・・というのはいけません。
この問題もきちんと式などで理論的な裏付けをしてください。
上から、「棚からぼた餅」風に物体が落ちてくるのですね(水平速度 0 )。しかも跳ね返らずそのまま合体するとか・・・まさにやわらかな餅ですね。
この場合も水平方向の運動量はきちんと保存されます。(物体と台車間の摩擦は内力ですので相殺されます)
したがって、水平方向だけの運動量保存則をたてると。
$M_2V + m_2\times 0 = (M_2+m_2)V_2$
です。したがって、答えは ③ 難易度 易
ちなみに、非弾性衝突をしているためエネルギーは熱エネルギーとなって散逸し、系の全運動エネルギーは保存されません。(熱エネルギーも含めた全エネルギーは保存されます)
したがって④⑤は×です。
第3問
問1
この問題では、電磁誘導はあまり関係ないような気が(少しあるか??)
まあ、単なる等速運動について考えればいいだけです。
電磁誘導による電圧変化はスイッチみたいに考えればいいでしょう。
グラフのどこを見てもいいのですが、見やすいという理由でピークのところを見てみます。
そうすると最初の上向きピークが 0.3 s で、次が 0.7 s で現れていますから 磁石が $0.7-0.3=0.4$ 秒間で 0.20 m 等速運動したと考えればいいですね。
したがって、
$v=\dfrac{x}{t}=\dfrac{0.20}{0.4}=5 \times 10^{-1}$ m/s
ということになります。
14の答え ⑤ 15の① 難易度 かなり易 小中の問題か?
問2
- 16 ② 難易度 かなり易
レンツの規則。
このように磁石を動かすと抵抗を受けるため仕事をし、それが電気エネルギーになるのです。
したがって、エネルギー保存の観点からも 入れるときは反発 出ていくときは引き止めます。 - 17 ③ 難易度 かなり易
内部抵抗が大きいため電流が流れにくいことが原因です。
もし、断線していたら台車にはたらく力は 0 になります。 - 18 ① 難易度 易
はやとちりしてミスった人がいるかも
台車の質量が大きく、慣性も大きいため運動が変化しずらい・・・というわけですね。
ひょっとして 質量 ⇒ 無視できる と反射的に反応してしまう人があったかも。
問3
電圧が2倍になっていることと、ピークの間隔が同じであることに注意します。。
まず、ピーク間隔が同じことから台車の速さは同じであることがわかります。
したがって、①②は即ハネです。
そうすると、磁石をいじることになりますね。
ファラデー電磁誘導則では、単位時間の磁束変化に比例して誘導起電力が起こります。
だから、答えは ⑤ 難易度 易
問4
次の問題はコイルを3つにしています。ピーク間隔は同じですから、台車は前と同じ速さで等速運動しています。
グラフをよーく見ると電圧の変化は同じで最初のピークが下向きです。
ははーん。コイルの巻き方が逆だな・・・
答えは ③ 難易度 かなり易
問5
今度は斜面です。
この場合、台車は等速運動・・・・というわけにはいかず等加速度運動します。
だから、だんだん速くなる・・・ということはファラデー電磁誘導の法則(誘導起電力は単位時間当たりの磁束変化に比例する)から 誘導起電力がだんだん大きくなるはずです。
だから、③④⑤のどれかになります。
さて、ここで横軸は「時間」であることを思い出しましょう。
つまり、だんだん間隔が短くなるはずです。
したがって、答えは ④ 難易度 易
グラフではいつも縦軸と横軸を確認するクセをつけましょう。
第4問
じゃーん センターや共通テストにおいて、大問で本格的に原子が取り上げられるって初めてかな???
それも、ボーアモデルとは。現役生の中にはギリギリで準備不足~~~なんて人もいるかもしれません。
2次試験でも原子は出る可能性が大きいので必ずマスターしましょう。
問1
これは等速円運動の話ですね。
- ア $v=r\omega$ より $\omega=\dfrac{v}{r}$
- イ 図の(b)から考えると、点線の部分の大きさ$=\omega \Delta t \times v$
問題文に従ってこれに ア の $\omega=\dfrac{v}{r}$ を代入しましょう。
なぜかって?
ラジアンを思い出しましょう。
ラジアン角 $\theta$ のときその角度が切り取る半径 $r$ の円弧の長さ $l$ は
$l=r\theta$
ですね。これについては
を見てください。
したがって
$\omega \Delta t \times v=\dfrac{v^2}{r}\Delta t$
答えは ⑥ 難易度 易
まあ加速度のことを言っているので、
$a=\dfrac{\Delta v}{\Delta t}=\dfrac{v^2}{r}$ から明らかですね。
問2
これは原子分野というより万有引力とクーロン力の式知ってるかい?・・みたいな問題です。
最初に「ここやってねぇ~」もうだめだ・・・なんてあきらめずにじっくり見てみましょう。苦手分野でもできる問題はきっとあります。最悪、選択肢から選べばいいんですから最後まであきらめずに。
$f=G\dfrac{mM}{r^2}$
$F=k_0\dfrac{e\times e}{r^2}$
上の2式を辺々割ればよいだけです。あとは計算間違わないように慎重に。
ではやってみましょう。
$\dfrac{G\dfrac{mM}{r^2}}{k_0\dfrac{e\times e}{r^2}}=\dfrac{GmM}{k_0e^2}$
値を代入してください。選択肢は10の10乗レベルで違っているのでそれほど精密に計算しなくてもいいですね。でも慎重に。
答えは ④ 難易度 易
問3
これはボーアモデルの計算ですが、問題文中にある複雑な式にビビッてはいけません。
単にエネルギーを求めるだけですから淡々とやりましょう。
クーロン力による位置エネルギーの式 $-k_0\dfrac{e^2}{r}$ です。
(注意:引力なので無限遠を基準にするとマイナスが付きます)
$E_n= $ 運動エネルギー + 位置エネルギー $=\dfrac{1}{2}mv^2+\left( -k_0\dfrac{e^2}{r}\right)$
ここで、 回転運動する電子にはたらく クーロン力 = 遠心力 の式を使いましょう。
よって、
$k_0\dfrac{e^2}{r^2}=m\dfrac{v^2}{r}$
これを変形して、$\dfrac{1}{2}mv^2=k_0\dfrac{e^2}{2r}$ がでます。
こうしなくても
与えられた ボーアの量子条件 を 運動エネルギーに代入して これに与えられた $r$ をぶち込めばできますね。式変形が多いけど。
結局、エネルギーを出すことができればできるということですね。
これをエネルギーの式に代入します。
$E_n=\dfrac{1}{2}mv^2+\left( -k_0\dfrac{e^2}{r}\right)$
$~~~~=k_0\dfrac{e^2}{2r}-k_0\dfrac{e^2}{r}$
$~~~~=-\dfrac{1}{2}k_0\dfrac{e^2}{r}$
さて、ここで問題で与えられた $r$ を代入します。
$E_n=-\dfrac{1}{2}k_0\dfrac{e^2}{r}$
$~~~~=\dfrac{1}{2}k_0e^2\times \dfrac{4\pi^2 k_0 me^2 }{h^2 n^2}$
$~~~~=-2\pi^2k_0^2\dfrac{me^4}{n^2 h^2}$
答え ④ 難易度 やや難
問4
これは、一度やった人なら簡単かも。でもやってないと?ですね。
エネルギー準位の高いほうから低いほうへ「落ちる」とき、あまったエネルギーを光子として放出します。
これさえ知っていればOKです。光子エネルギーは $h\nu$ です。
したがって、$E>E’$ であることに注意して、
$E-E’=h\nu$
より
$\nu=\dfrac{E-E’}{h}$
答えは ② 難易度 易
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