直感は正しいか?続編です。
今回はスキーダウンヒルでの途中でのジャンプについて考察します。
スキーでジャンプすると遅いのか
問題です。
スキーのダウンヒル競技において、レース途中で図のような箇所を飛び越えるか、それとも斜面に張りついて滑るのか?
あなたならどれを選びますか?
ただし、飛び出すときや、着地の際のエネルギーロスはない・・とします。
選択肢
-
-
- 斜面に張りつく
- ジャンプする
- 怖いので棄権する
- その他
-
ちょっと考えてみてください。
答え
とにかくこのレースに勝ちたいなら棄権せず、できるだけ「斜面に張りついて滑る」べきです。
だけど、直感では空気中へ飛び出したほうが速いような気がしますね?
なぜ斜面に張りつたほうが速いのでしょうか?
スキーダウンヒルは結局のところ、どれだけ早くゴールするかで勝敗が決まります。当たり前ですね。
斜面を滑るという競技の性質上、ゴールはスタート地点から、必ず水平にある距離進んだところにあります。
つまり、水平方向のスピードが速いほうが有利というわけです。
ダウンヒルスキーで水平方向に加速するにはどうすれば良いでしょうか?
それは「斜面に押してもらう」しかないのです。
斜面を滑るとき、そのスキーヤーには重力と斜面からの垂直抗力がはたらくことになります。
これらの合力が斜面に平行な方向にあるため、スキーヤーは斜面斜め下へ加速していくのです。
このベクトルが鉛直下方ではなく、斜め下であるためスキーヤーは水平方向へも加速運動することになります。
ではスキーヤーがジャンプして空中にあるときは?
スキーヤーが斜面から飛び出して空中にいるときに、スキーヤーにはたらく力は、空気抵抗を無視すれば鉛直下方にはたらく重力だけです。
よって、スキーヤーは水平方向には等速運動するしかありません。
これは物理基礎の最初で学習する斜方投射と同じ理屈です。
斜方投射では、
鉛直方向には加速度の大きさ g の加速運動をし、
水平方向には等速運動をする・・・と習いませんでしたか?
したがって、斜面に張りついたほうが水平方向に加速して速い!というわけです。
よって、トップスキーヤーは足を柔軟に使い、なるべくジャンプしないように、いつもなるべく雪面とコンタクトをとってすべります。
大人の人の正答率が低いとされた問題
多くの人が間違えている、類似の問題を考えてみましょう。
空中に投げ出されたボールにはたらく力はどの方向に向いているか?
図の A ~ G から正しいものをすべて選びなさい。ただし、空気抵抗は無視できるものとします。
答えはもちろん・・・「A」だけですね。
しかし、「C」を答えに含める人が多いのです。
たしかに、日常生活では運動方向に押してやらないとすぐ止まってしまいますよね。
ミニカーで遊んでいて、ミニカーを押すのをやめると、すぐに止まってしまう・・・・という自然観察からの結論です。
こういう感覚があるからこそ、スキーでも空中に飛び出したほうが速い・・・と思ってしまうわけです。
物理ではこのような「子供の科学(Children’s science)」が多く見られます。
物理を理解したいのなら、このような誤った自然感を一度破壊する必要があるのです。
このことを意識して学習するのとしないのとでは、物理理解における効率に大きな差が出ます。
ぜひ、意識してみて下さい。
以下オススメの問題集です。
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