RLC並列回路 交流の基礎6

交流のRLC並列回路について、インピーダンス、位相、などについて詳しく解説しています。

スポンサーリンク

RLC並列回路 交流の基礎6 

関連記事です。

KoKo物理
物理のエッセンス解説 物理の クイズ 物理の 勉強方法 物理実験 過去問 YouTubeチャンネル 新! 2024年共通テスト物理解説   ワンポイント物理 このページ ・力学 ・波動    ・熱力学 ・電磁気  ・原子物理 ・量子力学 ・...

RLC並列回路

図のような、抵抗 $R$、 コイル $L$、コンデンサー $C$ からなる並列回路を考えます。この回路全体のインピーダンス $Z$ は次の式になります。

$Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}   \right )^2}}$

また、回路全体にかかる電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して、
回路全体を流れる電流 $I=I_0\sin (\omega t + \phi) $ とすると、

 

 

$\tan \phi = \dfrac{ \:  I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}} = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L}   \: }{\dfrac{1}{R}}$

 

これらは RLC直列回路と比べてみると、それぞれの値をひっくり返したものになっています。
抵抗やリアクタンスも逆数にし、引く順番も逆。

 

RLC直列回路

$Z=\sqrt{R^2 +  \left(\omega L \:-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2 }$   $\tan \phi = \dfrac{\:\omega L \:- \dfrac{1}{\omega C}\:}{R}$

 

RLC並列回路

$Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}   \right )^2}}$   $\tan \phi = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L}   \: }{\dfrac{1}{R}}$

 


 

前回の直列回路その1その2)では直列のため、全ての素子に流れる電流は共通で同位相でした。

今回の並列回路ではそれぞれの素子に流れる電流は異なりますが、並列のため、電圧は共通で同位相になるはずです。

したがって、電圧を初期位相 0とし、 $V=V_0 \sin \omega t$ とおきます( $V_0$ : 最大値)。

 

それぞれの素子(抵抗、コイル、コンデンサー)を流れる電流を

  • 抵抗 ・・・・・・・・・・・ $I_R$
  • コイル ・・・・・・・・・ $I_L$
  • コンデンサー ・・・ $I_C$

とします。

 

 

電源を流れる電流を $I$ とすると、キルヒホッフの第1法則から

$I=I_R+I_L+I_C$

となります。

 

注意ですが、各素子を流れる電流には位相の差があるため、

最大値・実効値を考えたときに単純に、

$I_{0}=I_{R0}+I_{L0}+I_{C0}$

$I_{e}=I_{Re}+I_{Le}+I_{Ce}$

とはなりません。( $I_{\ast 0}$ : 最大値 $I_{\ast e}$ : 実効値)

これはグラフを見れば明らかです。

 

抵抗・コイル・コンデンサー に流れる電流

位相差

各素子を流れる電流を考えます。
各素子に共通の電圧がかかりますからそれを $V=V_0\sin \omega t$ とした場合、電圧と電流に関しての位相のずれから、各素子を流れる電流は次のように書けます。

  • 抵抗 $R$ を流れる電流 $I_R$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ と同位相
     $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
  • コイル $L$ を流れる電流 $I_L$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れている
     $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$ 
  • コンデンサー $C$ を流れる電流 $I_C$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して $\dfrac{\pi}{2}$ 進んでいる
     $I_C=I_{C0} \sin (\omega t  + \dfrac{\pi}{2})$

 

コイルやコンデンサーの位相差

    • 抵抗を流れる電流は電圧と同位相
    • コイルに流れる電流は電圧に対して $\dfrac{\pi}{2}$ だけ遅れている
    • コンデンサーに流れる電流は電圧に対して $\dfrac{\pi}{2}$ だけ進んでいる

いいかえると

    • 抵抗にかかる電圧は電流と同位相
    • コイルにかかる電圧は電流に対して $\dfrac{\pi}{2}$ だけ進んでいる
    • コンデンサーにかかる電圧は電流に対して $\dfrac{\pi}{2}$ だけ遅れている

くわしくは交流の基礎

を参照してください。

 

電流のグラフ

ここで各素子を流れる電流を縦軸に、時間を横軸にとったグラフを描きます。

電圧を $V=V_0\sin \omega t$ としたとき、各素子の時間 $t$ に対する電流の値はそれぞれ、

    • $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
    • $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$
    • $I_C=I_{C0} \sin (\omega t  + \dfrac{\pi}{2})$

です。

この $\dfrac{\pi}{2}$ の位相のずれとは、参考円において互いに 90° の角度差をもっているということです。
したがって、参考円での次の図のような等速円運動を考えます。

その際に、各参考円の半径は各素子に流れる電流の最大値( $I_{R0}$  $I_{L0}$   $I_{C0}$ )となります。 
これらのベクトルが図のように位相差を保ちながら、等速円運動している状態を考えます。
(注:ここでの図における各電流の大きさは適当です。図ではコンデンサーを流れる電流 > コイルを流れる電流 となっています。)

 

ここで、ある時刻 $t$ における回路全体を流れる電流を示すものは、参考円において各素子を流れる電流を合成したもの(図の赤色の部分)に等しくなります。

$I=I_R+I_L+I_C$

インピーダンス

コイル $L$ とコンデンサー $C$ の位相差はちょうど $\pi$ です。
イメージをつかみやすくするために、回転して次の図のようになったときを考えます。 

 

求める $I$ の大きさは図で、

ピタゴラスの定理から

$I^2_{0}={I_{R0}}^2+(I_{C0 } \:- I_{L0})^2$

$I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$

となります。

 

さて、ここで各素子のオームの式

  • $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
  • $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
  • $I_{C0}=\omega CV_0$

 

であることから、これらを $I_0$ の式へ代入します。( $V$ は RLC に共通です)

$I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$

$~~~~=\sqrt{ \left ( \dfrac {V_0}{R} \right )^2 + \left( \omega CV_0 \: –  \dfrac{V_0}{\omega L} \right)^2 }$

$I_0=\sqrt{\dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_0$

 

実効値の場合も同様に考えて、

  • $I_{Re}=\dfrac {V_e}{R}$
  • $I_{Le}=\dfrac{V_e}{\omega L}$
  • $I_{Ce}=\omega CV_e$
  • $I_{e}=\sqrt{{I_{Re}}^2+(I_{Ce} \:- I_{Le})^2}$
  • $I_e=\sqrt{ \dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_e$

 

ここで、$\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}   \right )^2}} = Z $ とおきます。
そうすると、

 

  • $I_0=\dfrac{V_0}{Z}$   
       
  • $I_e=\dfrac{V_e}{Z}$   

 

となり、オームの式 $I=\dfrac{V}{R}$ と同じ形です。
そこで、この $Z$ を交流回路における抵抗をあらわす値と考え、$Z$ をインピーダンスと呼ぶことにします(単位 $\Omega$ )。

位相差

今回は、電圧を $V=V_0 \sin \omega t $ としています。
回路全体にを流れる電流は、電圧との位相のずれを $\phi$ として、
$I=I_0\sin (\omega t + \phi) $ と考えられます。

 電圧 $V$ の位相と抵抗を流れる $I_{R}$ の位相は等しいため、図の角度 $\phi$ が電圧 $V$ に対する、回路全体を流れる電流 $I=I_R+I_L+I_C$ の位相のずれを示していることになります。

 

図では位相差を比較するために、

 電圧 $V$ と電流 $I$を同時に描いています。

これは単に位相について比較するためです。

 

図より、RLC並列回路にかかる電圧 $V$ と回路全体を流れる電流 $I$ の位相差 $\phi$ は、

$\tan \phi = \dfrac{ \:  I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}}$

$~~~~~~~~~ = \dfrac{\: \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$

となります。

 

  • $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
  • $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
  • $I_{C0}=\omega CV_0$

を使いました。

注意:これらは RLC並列回路の式です。

LC並列回路 RC並列回路 RL並列回路

  • LC並列回路

さて、RLC並列回路において、抵抗 $R$ がない場合はどうなるでしょうか。その場合は、単に式から抵抗に関する部分を消去すればOKです。

 

 

$Z = \dfrac{1}{\sqrt{\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}   \right )^2}}  $

$~~~= \dfrac{1}{\left | \omega C – \dfrac{1}{\omega L}   \right |}$

この場合の位相は、$\omega C$ と $\dfrac{1}{\omega L}$ の大きいほうを向きます。

 

もし $\omega C$ と $\dfrac{1}{\omega L}$ が同じ大きさのときはインピーダンス $Z$ が $\infty$ になり、電流が流れません。これについては共振の記事で解説します。

 

同様に

  • RC並列回路

     

$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C  \right )^2}}  $

 

  • RL並列回路

      

$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( – \dfrac{1}{\omega L}   \right )^2}}  $

まとめ

抵抗を流れる電流 $I_R$  コイルを流れる電流 $I_L$  コンデンサーを流れる電流 $I_C$ とする。

各素子を流れる電流の最大値と実効値をそれぞれ以下の式で示す。

  • 回路全体・・・・・・最大値 $I_0$      実効値 $I_e$
  • 抵抗・・・・・・・・・・最大値 $I_{R0}$    実効値 $I_{Re}$
  • コイル・・・・・・・・最大値 $I_{L0}$    実効値 $I_{Le}$
  • コンデンサー・・最大値 $I_{C0}$    実効値 $I_{Ce}$

 

RLC(LCR)並列回路においては、回路全体にかかる電圧を $V=V_0\sin \omega t$ とした場合、各素子を流れる電流は

  • $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
  • $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$
  • $I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$

 

  • $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
  • $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
  • $I_{C0}=\omega CV_0$

 

  • $I_{Re}=\dfrac {V_e}{R}$
  • $I_{Le}=\dfrac{V_e}{\omega L}$
  • $I_{Ce}=\omega CV_e$

 

$I=I_R+I_L+I_C$

 

  • $I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$
  • $I_0=\sqrt{\dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_0$
  • $I_{e}=\sqrt{{I_{Re}}^2+(I_{Ce} \:- I_{Le})^2}$
  • $I_e=\sqrt{ \dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_e$

 

この $Z$ を交流回路における抵抗成分と考え、インピーダンスと呼びます。

$I_0=\dfrac{V_0}{Z}$

$I_e=\dfrac{V_e}{Z}$ 

$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}   \right )^2}} $

 

RLC並列回路にかかる電圧と回路全体を流れる電流の位相差 $\phi$ は、

$\tan \phi = \dfrac{ \:  I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}} = \dfrac{\: \omega C \:  – \dfrac{1}{\omega L}  \: }{\dfrac{1}{R}}$

 

RLC直列回路・RLC並列回路 ともに基本をしっかり理解できればおそるるに足りません。

コメント