物理のクイズ すべり台の物理 斜面に置いたおもりはいつすべる?

摩擦についてはみなさんご存知ですね。
最大(静止)摩擦力 動摩擦力など・・・


おすすめの本です。

Amazon Amazon

スポンサーリンク

物理のクイズ 斜面上に置いたおもりはいつすべる?

いきなり問題です。

今、摩擦のある斜面の上に質量 $m$ の物体を置きます。
物体は斜面上で摩擦力によって、かろうじて静止しています。

 

斜面の角度を保ったまま、
斜面上の物体にさらに質量 $m$ のおもりを一つずつ、そーっとのせていきます。
(図の突起は、おもりをのせるためのガイドです)

さて、物体が滑り出すのはおもりを何個のせたときでしょうか?

選択肢

      1. 1個
      2. 2個
      3. 3個
      4. 4個
      5. 5個以上
      6. 板と物体の摩擦係数によるので一概に言えない
      7. 何個載せても滑らない

のうちどれでしょうか?
物体の大きさは考えなくても良いとします。

答え

答えは・・・7 の「何個のせても滑らない」です。

はて、不思議なこともあるものです。
直感というか、普通の感覚では重いものほど、ずり下がっていきやすいと思いませんか?

氷の斜面では体重の重い人ほど、すべって痛い思いをしそうなんですが・・・。


では物理で考えてみましょう。

まず、最初におもりを斜面に置いた段階では、おもりはかろうじて止まっているんですよね。

これはどういうことかというと、物体は、ほぼ最大(静止)摩擦力を受けて静止しているということです。

では図を書いてみましょう。おもりは一個です。質量は $m$ です。
そうすると、おもりの受ける重力は $mg$ 、斜面に垂直な重力の成分は $mg\cos \alpha $ 、平行な成分は $mg\sin \alpha $ です。

よって、垂直抗力 $N_1$ は $N_1=mg\cos \alpha $ 。
したがって、摩擦力 $F_1$ は静止摩擦係数を $\mu$ として、

$F_1=\mu N_1=\mu mg\cos \alpha$

ですね。これがこの場合の、摩擦力の限界です。

さて、同じ質量のおもりを1個増やしてみましょう。

この場合、おもりの受ける重力は $2mg$ 、斜面に垂直な重力の成分は $2mg\cos \alpha $ 、平行な成分は $2mg\sin \alpha $ です。
同様に、垂直抗力 $N_2$ は $N_2=2mg\cos \alpha $

さきほどの場合、最大(静止)摩擦力 $F_1$ と $mg\sin\alpha$ はほぼつり合っていました。
すなわち、 $F_1=mg\sin\alpha$ 

おもりを2個載せたときの、斜面と平行に働く力は $2mg\sin \alpha $ です。

さて、おもりを増やすと、最大であるはずの $F_1$ を超えてしまいましたね。
やはり重くすると、すべるのでは?

おもり2個の場合の最大(静止)摩擦力$F_2$ を計算してみましょう。

静止摩擦係数を $\mu$ とすると、

$F_2=\mu N_2=2\mu mg\cos \alpha$

となります。

質量を $2m$ に増やしたこの場合、確かに重力の斜面方向の力は大きくなって、2倍になります。

しかし、最大(静止)摩擦力も大きくなって、 $F_2=\mu N_2=2\mu mg\cos \alpha$ と2倍になっています。

この問題のような設定では、おもりを増やすごとに、耐えられる最大(静止)摩擦力もそれに比例して増えていきます

したがって、「どれだけおもりを増やしたところで滑り出すことはない
ということになります。

摩擦角

この滑り出す角度が摩擦角と呼ばれるものです。

静止摩擦係数 $\mu$ のとき、

図より、物体が斜面上で滑り出す限界状態にあるとします。
斜面に平行な方向のつり合いを考えると

$mg\sin \alpha=\mu N=\mu mg \cos \alpha$

ということは、

$\mu=\tan \alpha $

です。

つまり、滑り出す限界角は質量に無関係であることがわかります。


ちなみにですが、この問題設定では、斜面の傾きの角度を、物体が滑り出す限界の角度にしていますが、摩擦角以下であれば、角度が何度でも物体は滑り出さないことは明らかですね。

こんなことも

いままでのお話はご納得いただけましたでしょうか?
今まで考えてきたことが正しいのだとすると、次のお話はどうなりますかね?

すべり台で・・・

公園のすべり台、滑ろうとするけど、ぜんぜん滑っていかない。
子供を抱っこしてすべればいいのかな・・・?

冬山での出来事

冬山の氷の斜面で私はいまにも奈落の底まで滑落しそうな恐怖に震えていた。

上から、同じような格好をした隊長が声をかける。ちなみに、私の隊の靴や服などの装備はみな同じだ。

「おーい!大丈夫かぁ?」

「なんとか大丈夫。だけどもう滑って落ちていきそう・・・」

「よーし、今、俺が行くからな!」

「来ちゃだめ。だって、隊長、私よりかなり太っていて重いから、すぐ滑っちゃうよ!」

「わかった、いま体重の軽い人を呼びに行っている。」


まあ他の要素も考えなければならんけど、滑る滑らないに関しては体重が重くても同じですかね?


物理現象においては私達の直感や常識などあやしいものです。
力学が難しいと感じるのは、力学の諸原理が直感や常識とかけ離れているからです。

物理を理解するには、一度この常識や直感を捨て去ることが重要なのです。
このことを意識するとしないでは、物理の理解の進み具合がまるで違ってきます。

おすすめの物理の問題集などです。

Amazon Amazon

 

コメント