高校数学でわかるマクローリン展開

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高校物理で出てくるものに近似式があります。
みなさんも使っていますよね。
例の、$x$ がすごーく小さいとき $( \: |x|\ll 1 \:)$、

$(1+x)^n \: \fallingdotseq  1+nx $

という例のやつです。
でもみなさん、なにか疑問に思いませんでしたか?・・・「なぜこんなことが言えるんだろう??」とか。

この式を丸暗記しろ!といわれたら・・・・

やっぱり、もやもやするな・・・

  • 頭のいい人・・・・自力で調べたり考えたりして式の意味を理解する
  • 要領のいい人・・・「あっそう」と、気にせず丸暗記する
  • 普通の人・・・・・やる気が失せる  私を含めた大多数の人

ここでは微分を使うことでこのことについて、やさしく解説しています。
なのでこの記事を読むと、なぜこの式が成り立つのかがとてもよくわかります。
高校物理・数学の範囲としても有益な話になるはずです。


動画で解説

マクローリン展開 高校物理・数学

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マクローリン展開

実は、この近似は大学で習うマクローリン展開を理解すれば簡単にわかることなんです。

えっ!マクローリン展開?・・・聞いたことないけど

大学の数学や物理は難しいし、大学入試には必要ないんじゃ・・・なんて思うかもしれませんが、この程度のことは高校数学の知識があれば簡単にわかってしまうものなんです。

そして、数学や物理でも思考の幅が確実に広がるはずです。
なにより友達に自慢できます。

たとえば、マクローリン展開を使うと・・・

$e^x=1+\dfrac{1}{1!}x+\dfrac{1}{2!}x^2+\dfrac{1}{3!}x^3+  \cdots $

$\sin x=\dfrac{1}{1!}x-\dfrac{1}{3!}x^3+\dfrac{1}{5!}x^5- \dfrac{1}{7!}x^7 + \cdots $

と表せるのです。

どうです?ちょっと驚きですね

また、$0.9997^4$ といった

式の近似計算も簡単にできます!

どうやってやるの?

それでは、ちゃちゃっとやっていきましょう。

ある関数 $f(x)$ があるとき・・・(これはいいですよね?)
この関数を $x$ の多項式であらわしたい、とします。
簡単に言うと
$\begin{split}f(x)= a_0&+ a_1x^1+a_2x^2 \\
&+a_3x^3+ \cdots + a_kx^k + \cdots \end{split}$ 
としたいのです。

これは結論から言うと、

$\begin{split}f(x)= f(0)+ \dfrac{f^{\prime}(0)}{1!}x^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2
+\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3+ \cdots + \dfrac{f^k(0)}{k!}x^k + \cdots \end{split}$

となります。補足:厳密には上の等式が成立するために、右辺の級数が収束することが必要です)

第 $k$ 項は、$\dfrac{f^k(0)}{k!}x^k$

です。ここで $f^k(x)$ は $k$ 階微分を示しています。
 

なんだか難しそう

これが意外と簡単にできるんです

式を導く

今、$f(x)$ で
$\begin{split}f(x)=& a_0+a_1x^1+a_2x^2+a_3x^3\\
&+a_4x^4 + \cdots + a_kx^k + \cdots \end{split}$ 
と展開できるものと仮定します。

$f(0)=a_0$
は明らかです。したがって、
$a_0=f(0) \;\;\; \cdots\cdots (1) $

ここで $f(x)=a_0+ a_1x^1 + a_2x^2 +\cdots $ の両辺を $x$ で微分してやります。

$\begin{split}f^{\prime}(x)=&1a_1+2a_2x^1+3a_3x^2\\
&+4a_4x^3 + \cdots + ka_kx^{(k-1)} + \cdots \end{split}$
です。

$f^{\prime}(0)$ を求めてやります。$x$ のある項はすべて消えます。
$f^{\prime}(0)=1a_1$
つまり、$a_1=\dfrac{f^{\prime}(0)}{1!} \;\;\; \cdots\cdots (2)$

もう一一度微分して二階微分をとります。

$\begin{split}f^{\prime\prime}(x)=&2a_2+2\times 3a_3x^1+3\times 4a_4x^2\\
& + \cdots + k(k-1)a_kx^{(k-2)} + \cdots \end{split}$
ですね。

$f^{\prime\prime}(0)$ を求めてやります。同じく、$x$ のある項はすべて消えます。
$f^{\prime\prime}(0)=2a_2 $

ゆえに、$a_2=\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!} \;\;\; \cdots\cdots (3)$

さらにもう一度微分しましょう。

$\begin{split}f^{\prime\prime\prime}(x)=&1\times 2\times 3a_3+2\times 3\times 4a_4x^1 + \\
&\cdots + k(k-1)(k-2)a_kx^{(k-3)} + \cdots \end{split}$
となりました。

$f^{\prime\prime\prime}(0)$ を求めてやります。やはり、$x$ のある項はすべて消えます。
$f^{\prime\prime\prime}(0)=1\times 2\times 3a_3 $

ゆえに、$a_3=\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!} \;\;\; \cdots\cdots (4)$

ということは、

$a_k=\dfrac{f^k(0)}{k!} \;\;\; \cdots\cdots (5)$

さて、
$\begin{split}f(x)=&a_0+a_1x^1+a_2x^2\\
& +a_3x^3+ \cdots + a_kx^k + \cdots \end{split}$ 
に $a_0,\; a_1,\; a_2,\; \cdots a_n$、つまり $ (1),\; (2),\; (3),\; (4),\; (5),\; $を代入してやります。

$\begin{split}f(x)=a_0+& a_1x^1+a_2x^2\\
&+a_3x^3+ \cdots + a_kx^k + \cdots \end{split}$ 

$\begin{split}~~~~~~~~=& f(0)+\dfrac{f^{\prime}(0)}{1!}x^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3 +\cdots + \dfrac{f^k(0)}{k!}x^k + \cdots \end{split}$

となります。

$\begin{split}f(x)=& f(0)+\dfrac{f^{\prime}(0)}{1!}x^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3 +\cdots + \dfrac{f^k(0)}{k!}x^k + \cdots \end{split}$

$(1+x)^n$ の近似はどうなるの?

それでは、本題の $(1+x)^n$ の近似について考えていきましょう。

$f(x)=(1+x)^n$ として、

$f(0)=1$

$f^{\prime}(x)=n(1+x)^{n-1}$
$f^{\prime}(0)=n(1+0)^{n-1}=n$ 

$f^{\prime\prime}(x)=n(n-1)(1+x)^{n-2}$
$\begin{split}f^{\prime\prime}(0)&=&n(n-1)(1+0)^{n-2}\\
&=&n(n-1) \end{split}$ 

$f^{\prime\prime\prime}(x)=n(n-1)(n-2)(1+x)^{n-3}$
$\begin{split}f^{\prime\prime\prime}(0)&=&n(n-1)(n-2)(1+0)^{n-3}\\
&=&n(n-1)(n-2) \end{split}$ 

です。
$(1+x)^n$ をマクローリン展開します。

$\begin{split}(1+x)^n=& f(0)+\dfrac{f^{\prime}(0)}{1!}x^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3 +\cdots \end{split}$

なので、

$\begin{split}(1+x)^n=& 1+\dfrac{n}{1!}x^1+\dfrac{n(n-1)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{n(n-1)(n-2)}{3!}x^3 +\cdots \end{split} $

ここで最初の条件を思い出すと、
$x$ がすごーく小さいとき $(\:|x| \ll 1 \:)$ のお話しでした

例えば、$x=0.00001$ なんてときは、
$x^2 \fallingdotseq 0 $ で、$x^n \;(n\geqq2)$ では $ 0 $ とみなせます。

なので、(6) 式から $x$ の2次以降がすべて消えて、

$(1+x)^n \: \fallingdotseq  1+nx $

となるというわけです。

わかりました!

$e^x$ をマクローリン展開しよう

では、今度は $e^x$ をマクローリン展開してみましょう。
$f(x)=e^x$ とします。

$f(0)=e^0=1$

$f^{\prime} (x)=e^x$
$f^{\prime} (0)=e^0=1$

$f^{\prime\prime} (x)=e^x$
$f^{\prime\prime} (0)=e^0=1$

$f^{\prime\prime\prime} (x)=e^x$
$f^{\prime\prime\prime} (0)=e^0=1$

ですので、
$\begin{split}f(x)=& f(0)+\dfrac{f^{\prime}(0)}{1!}x^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3 +\cdots + \dfrac{f^k(0)}{k!}x^k + \cdots \end{split}$

より、

$\begin{split}
e^x= 1+\dfrac{1}{1!}x^1+\dfrac{1}{2!}x^2+\dfrac{1}{3!}x^3 +\cdots
\end{split}$

そうすると、$x=1$ のときを考えて、

$e= 1+\dfrac{1}{1!}+\dfrac{1}{2!}+\dfrac{1}{3!} +\cdots $

となります。$e$ がこのような単純な形で示せるのは何とも驚きです。

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まとめ

関数 $f(x)$ についてマクローリン展開すると、

$\begin{split}f(x)=&f(0)+\dfrac{f^{\prime}(0)}{1!}x^1+\dfrac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{f^{\prime\prime\prime}(0)}{3!}x^3 +\cdots + \dfrac{f^k(0)}{k!}x^k + \cdots \end{split}$

その第 $k$ 項は、$\dfrac{f^k(0)}{k!}x^k$

です。

この式を覚えておくとよいですね


高校物理でよく使う近似式をマクローリン展開してみよう!

$\begin{split}(1+x)^n=& 1+\dfrac{n}{1!}x^1+\dfrac{n(n-1)}{2!}x^2\\\\
&+\dfrac{n(n-1)(n-2)}{3!}x^3 +\cdots \end{split}$

となるから、$x$ がすごーく小さいとき $(\:|x| \ll 1 \:)$ では、

$(1+x)^n \: \fallingdotseq  1+nx $

の近似が許されます。

こんな計算もできます。
$\begin{split}0.9997^4&=(1-0.0003)^4\\
& \fallingdotseq  1-4\times 0.0003\\
&=0.9988 \end{split}$ 

他にもいろいろ使いようがあります。

なるほど!

練習として、各自で

$e^x$ や $\sin x$、$\cos x$

などをマクローリン展開してみましょう

補足

マクローリン展開した級数が収束するかどうかは、ダランベールの判別式で判定できる。

$$L=\lim_{k\rightarrow\infty}\dfrac {| a_{k+1} |}{| a_k |}$$

このダランベールの式で出される $L$ は $n\rightarrow \infty$ における級数の公比の絶対値である。
–>

このとき収束するためには $L<1 $ であればよく、収束半径 $R=\dfrac{1}{L}$ である。
ちなみに、$e^x$、$\sin x$、$\cos x$ では、収束半径 $R$ は無限大である。

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