力率と消費電力 交流の基礎7

今回は力率について解説します。高校物理ではあまり扱いませんが、理解しておきたいところです。

交流回路ではコイル・コンデンサーでは電力を消費しません
したがって、回路全体の消費電力は抵抗におけるもので、

 

RLC直列回路では

$\overline{P}=I_eV_e \cos \phi=R{I_e}^2$

$ Z = \sqrt{ R^2+\left( \omega L \:- \dfrac{1}{\omega C }  \right)^2 }$

 

$\cos \phi =\dfrac{R}{Z}=\dfrac{R}{\sqrt{R^2+\left( \omega L -\dfrac{1}{\omega C}\right )^2}}$

$\cos \phi = \dfrac{V_{R0}}{V_0}=\dfrac{V_{Re}}{V_e}$

 

RLC並列回路では

$\overline{P}=I_e V_e   \cos \phi =\dfrac{{V_e}^2}{R} $

$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{ \dfrac{1}{R^2} + \left( \omega C \:- \dfrac{1}{\omega L }  \right)^2 }}$

 

$\cos \phi =\dfrac{Z}{R}=\dfrac{\dfrac{1}{R}}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left( \omega C -\dfrac{1}{\omega L}\right )^2}}$

$\cos \phi=\dfrac{I_{R0}}{I_0}=\dfrac{I_{Re}}{I_e}$

 

$\cos\phi$ を力率と呼びます。 $ ( \:0 \leqq \cos \phi \leqq 1 \: )$
RLC直列回路と並列回路では力率の求め方が違うので注意。

 

$\overline{P}=I_e V_e   \cos \phi  $ を有効電力と呼び、単位には W(ワット)を用います。

それに対して、交流電圧の実効値と電流の実効値の積 $I_eV_e$ を皮相電力といいます。
皮相電力は単に名目上の電力であり、実際の消費電力ではありません。そのため、単位に W (ワット)は使わず、VA(ボルトアンペア)が使われます。

交流の式はエグいですが、覚えなければならないことはあまりありません。

 

電磁気の記事は次を参照してください。

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力率と消費電力 交流の基礎7

 

コイル・コンデンサーにおける消費電力の時間平均は 0 です。

参考記事

3分でわかる!交流の消費電力について
交流の消費電力については素子が抵抗、コイル、コンデンサーで違います。 コイルとコンデンサーの場合消費電力の時間平均は0ですから、基本的にコイルやコンデンサーでは電力を消費しません。電験三種の理論対策にも

したがって交流回路では基本的に、抵抗における消費電力についてのみ考えれば良いことになります。

以下、電源電圧の最大値を $V_0$  実効値を $V_e$ で示します。
また、各素子の電圧・電流のそれぞれの最大値にも各素子を示す記号に添え字 $_0$ で、実効値は $_e$ で示します。
($R$ は抵抗、$L$ はコイル、$C$ はコンデンサーを示します)

例 コイルの電圧最大値 $V_{L0}$ 実効値 $V_{Le}$
           電流最大値 $I_{L0}$ 実効値 $I_{Le}$ 

RLC直列回路

全体の電流 $I=I_0 \sin \omega t$

全体の電圧 $V=V_0\sin (\omega t + \phi)$

抵抗にかかる電圧 $V_R=V_{R0}\sin \omega t $

コイルにかかる電圧 $V_L=V_{L0}\sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$

コンデンサーにかかる電圧 $V_C=V_{C0} \sin (\omega t \:- \dfrac{\pi}{2})$

$\tan \phi = \dfrac{\omega L \:- \cfrac{1}{\omega C}}{R}$

 

RLC直列 ・・・ 計算

全体の電流と電圧から計算すると

全体の電流 $I=I_0 \sin \omega t$

全体の電圧 $V=V_0\sin (\omega t + \phi)$

${P}=IV$

$~~~=I_0 \sin \omega t \times V_0\sin (\omega t + \phi)$

$~~~=I_0V_0 \sin \omega t  \left(  \sin \omega t  \cos \phi + \cos \omega t \sin \phi \right ) \:\cdots\cdots$ 

$~~~=I_0V_0 \left(  \sin^2 \omega t  \cos  \phi + \sin \omega  t \cos \omega t \sin \phi \right ) $

$~~~=I_0V_0 \left(  \dfrac{1-\cos 2 \omega t}{2}  \cos\phi + \dfrac{\sin 2 \omega t}{2}  \sin \phi \right )  \:\cdots\cdots$ 

 

時間平均を取るわけだから、 $\cos 2 \omega t = 0 $   $\sin 2 \omega t = 0 $ となる。
したがって、

$\overline{P}=I_0V_0   \dfrac{1}{2}  \cos  \phi  $

$~~~=\dfrac{I_0}{\sqrt{2}}\dfrac{V_0}{\sqrt{2}}   \cos\phi  $

$~~~=I_e V_e   \cos \phi  $

 

$V_e=\dfrac{1}{\sqrt{2}}V_0$ $I_e=\dfrac{1}{\sqrt{2}}I_0$ を使いました。

つまり、この回路全体の消費電力は

$\mathrm{回路全体の消費電力}=\mathrm{(全体の電圧の実効値)} \times \mathrm{(全体の電流の実効値) }× \cos \phi $

という値になります。この $\cos \phi$ を力率と呼んでいます。

 

 コイルとコンデンサーでは電力を消費しないため、回路全体での電力は抵抗のみで消費されます。

注: $\phi$ は定数のため、$\cos\phi$ も定数です。

したがって、$\cos\phi$ の時間平均 = 0 とはなりません。

 

RLC直列 ・・・ 図から

全体の消費電力を考えるには、コイルとコンデンサーの消費電力は 0 のため、抵抗のみについて考えればよい。
抵抗での消費電力は

$\overline{P} = I_{Re}V_{Re} $

$V_{Re}=RI_{Re}$ だから

$~~~=R{I_{Re}}^2$

抵抗を流れる電流は回路全体で共通だから $I_{Re}=I_e$ 
よって、

$\overline{P} =R{I_e}^2$

 

また、

抵抗の消費電力のみを考えるわけだから、抵抗にかかる電圧 $V_{Re}$ を考え、

図から、 $V_{R0}=V_0  \cos \phi \:\:\cdots\cdots (\ast) $ したがって、 $V_{Re}=V_e  \cos \phi $ となります。
( $-\frac{\pi}{2} \leqq \phi \leqq \frac{\pi}{2} $ よって、 $ 0  \leqq \cos \phi \leqq 1$ )

よって、

$\overline{P} = I_{Re}V_{Re} $

$~~~=I_{Re}V_e  \cos \phi$

直列回路のため、抵抗を流れる電流は回路全体で共通だから $I_{Re}=I_e$ 

$\overline{P}=I_{e}V_e  \cos \phi$

 

 

RLC直列 ・・・ 力率

力率 $\cos\phi$ については式 $(\ast)$ の   $V_{R0}=V_0  \cos \phi$ より、

$\cos \phi=\dfrac{V_{R0}}{V_0}$

$V_0=ZI_0$     $V_{R0}=RI_{R0}=RI_0$ だから、

$\cos \phi=\dfrac{RI_0}{ZI_0} = \dfrac{R}{Z}$

RLC直列回路のインピーダンス $Z$ を代入する。 $Z=\sqrt{R^2+\left( \omega L -\dfrac{1}{\omega C}  \right )^2 } $

$\cos \phi = \dfrac{R}{Z} = \dfrac{R}{\sqrt{R^2+\left( \omega L -\dfrac{1}{\omega C}\right )^2}}$

$-\dfrac{\pi}{2} \leqq \phi \leqq \dfrac{\pi}{2} $    $ 0  \leqq \cos \phi \leqq 1$

 

RLC並列回路

全体の電流 $I=I_0 \sin (\omega t + \phi)$

全体の電圧 $V=V_0\sin \omega t $

$\tan \phi = \dfrac{\omega C \:- \dfrac{1}{\omega L}}{\cfrac{1}{R}}$

 

 

 

RLC並列 ・・・ 計算

計算をしてみると、

${P}=IV$

$~~~=I_0 \sin (\omega t + \phi) \times V_0\sin \omega t $

$~~~=I_0V_0  \left(  \sin \omega t  \cos \phi + \cos \omega t \sin \phi \right ) \sin \omega t \:\cdots\cdots$ 

$~~~=I_0V_0 \left(  \sin^2 \omega t  \cos \phi + \sin \omega  t \cos \omega t \sin \phi \right ) \:\cdots\cdots$ 

$~~~=I_0V_0 \left(  \dfrac{1-\cos 2 \omega t}{2}  \cos\phi + \dfrac{\sin 2 \omega t}{2}  \sin \phi \right ) $

時間平均を取るわけだから、 $\cos 2 \omega t = 0 $   $\sin 2 \omega t = 0 $ となる。
これはRLC直列回路の場合と同じ式の形になり、

$\overline{P}=I_0V_0   \dfrac{1}{2}  \cos \phi  $

$~~~=\dfrac{I_0}{\sqrt{2}}\dfrac{V_0}{\sqrt{2}}   \cos  \phi  $

$~~~=I_e V_e   \cos \phi  $

 

RLC並列 ・・・ 図から

コイルとコンデンサーでの消費電力は 0 だから、抵抗だけを考えればよい。
抵抗での消費電力は、

${P}=I_{Re}V_{Re}$    ここで $I_{Re}=\dfrac{V_{Re}}{R}$ より

$~~~=\dfrac{{V_{Re}}^2}{R}$

並列回路のため、各素子にかかる電圧は共通で、  $V_{Re}=V_e$ であるから、

 

$\overline{P}=\dfrac{{V_{e}}^2}{R}$

 

 

また、

抵抗の消費電力のみを考えるわけだから、抵抗に流れる電流 $I_{Re}$ を考え、

図から、 $I_{R0}=I_0  \cos \phi \:\:\cdots\cdots (\ast\ast)$ したがって、 $I_{Re}=I_e  \cos \phi$ となります。
( $-\frac{\pi}{2} \leqq \phi \leqq \frac{\pi}{2} $ よって、 $ 0  \leqq \cos \phi \leqq 1$ )

 

よって、

$\overline{P} = I_{Re}V_{Re} $

$~~~=I_{e}V_{Re}  \cos \phi$

並列回路のため、抵抗にかかる電圧は回路全体で共通だから $V_{Re}=V_e$  $V_{R0}=V_0$

$\overline{P}=I_{e}V_e  \cos \phi$

RLC並列 ・・・ 力率

力率 $\cos\phi$ については式 $(\ast\ast)$ の  $I_{R0}=I_0  \cos \phi$ より、

$\cos \phi=\dfrac{I_{R0}}{I_0}$

$I_0=\dfrac{V_0}{Z}$      $I_{R0}=\dfrac{V_{R0}}{R}=\dfrac{V_{0}}{R}$ だから、

$\cos \phi=\dfrac{ \dfrac{V_{0}}{R} }{\dfrac{V_0}{Z}}=\dfrac{Z}{R}$

RLC直列回路のインピーダンス $Z$ を代入する。$ Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}  \right )^2}} $

$\cos \phi = \dfrac{Z}{R} = \dfrac{\dfrac{1}{R}}{\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L}  \right )^2}} }$

$-\dfrac{\pi}{2} \leqq \phi \leqq \dfrac{\pi}{2} $    $ 0  \leqq \cos \phi \leqq 1$

 

補   三角関数

 

$\sin(a \pm b)=\sin a \cos b \pm \cos a \sin b$

$\cos(a \pm b)=\cos a \cos b \mp \sin a \sin b$

 

$a=b$ とすると、

$\sin(a + a)=\sin a \cos a + \cos a \sin a$

$\sin 2a = 2\sin a \cos a$

$\sin a \cos a = \dfrac{\sin 2a}{2}$

 

$\cos(a + a)=\cos a \cos a – \sin a \sin a$

$\cos2a = \cos^2 a -\sin^2 a$

$~~~~~~=(1 – \sin^2 a) – \sin^2 a$

$~~~~~~=1 – 2\sin^2 a$

$\sin^2 a = \dfrac{1- \cos 2a}{2}$

 

$\cos2a = \cos^2 a -\sin^2 a$

$~~~~~~ = \cos^2 a -(1 – \cos^2 a) $

$~~~~~~ = 2\cos^2 a -1$

$\cos^2 a =\dfrac{1+\cos 2a}{2}$

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