静止衛星の「ひまわり」をご存じですか?
ひまわりは日本の運営する静止気象衛星です。
テレビで「ひまわり」の撮影した画像を見ることがありますが、いつも同じ位置から撮影したものがでます。
さて、この静止衛星というのはどのような衛星でしょうか?
静止衛星
普通、衛星というのは、ロケットと違って動力を持ちません。
抵抗の少ない宇宙空間を慣性の法則により運動しているのです。
静止衛星は、地表から見るといつも空の一定の位置に浮かんでいるように見えます。
ですから、静止衛星は気象用の衛星にはうってつけなのです。
このとき、衛星が静止衛星となるポイントは 2 つあります。
- 周回の回転周期が地球と同じ1日であること
- 軌道が赤道上空にあること
でも、人工衛星の周期が地球の自転周期と同じでさえあれば、どんな軌道であれ、静止衛星になるような気もしませんか?
しかし、地表から見て静止するためには、回転周期が地球の自転周期と同じ、というだけでは不十分です。
なぜなら、地球が衛星を引っ張る重力は必ず地球の(重力)中心へ向かうからです。
つまり、次の図のような軌道は、動力をもたない人工衛星には不可能です。
よって、静止衛星のためには、万有引力の方向と円運動のための向心力の方向が一致することが必要です。
したがって、静止衛星となるには、赤道上空を飛び、なおかつ回転周期が1日であることが絶対に必要です。
次の図では、地表の人の上にいつも人工衛星があります。
これは地球と静止衛星の角速度が同じである、ということです。
たとえ人工衛星の周期が1日でも、次の図のような場合では、静止衛星にはなれません。
静止衛星は赤道上空にあり、かつ地球の自転と同期して1日で一周することで、地表から見ると、まるで空に静止しているかのように見えます。
これが、「静止」衛星といわれるゆえんです。
決して本当に止まっているわけではなく、
実際は1日で地球を一周する、猛スピードでブッ飛んでいます。
静止衛星の軌道の高さ
では、静止衛星の軌道を求めてみましょう。
地球の半径を $R$ 、地球質量を $M$ 、人工衛星の質量 $m$ とし、人工衛星の赤道上の高さを $h$ とします。
軌道を周回するときの周期は、静止衛星ですから $T=1\:日$ です。
静止衛星に働く力は、遠心力(慣性力)を考えると、万有引力と遠心力のつり合いの状態にあります。
したがって、次の式が成り立ちます。
$G\dfrac{mM}{(R+h)^2}=m(R+h)\left( \dfrac{2\pi}{T}\right)^2$
より、
$h=\sqrt[3]{\dfrac{T^2}{4\pi^2}GM}-R$
これに、$G=6.7\times 10^{-11}\:\mathrm{N\cdot m^2/kg^2}$、$M=6.0\times 10^{24}\:\mathrm{kg}$、$R=6.4\times 10^{6}\:\mathrm{m}$、$T=24\times 60\times 60 \:\mathrm{s}$ として計算してみます。
そうすると、
$h=\sqrt[3]{\dfrac{(24\times 60\times 60)^2}{4\pi^2}6.7\times 10^{-11}\times 6.0\times 10^{24}}-6.4\times 10^{6}$
$~~\fallingdotseq 3.6\times 10^7\:\mathrm{m}$
$~~=3.6\times 10^4\:\mathrm{km}$
よって、静止衛星の軌道は赤道上空 $36000\:\mathrm{km}$ の高さになります。
面白いことに、この $h$ は、 $h=\sqrt[3]{\dfrac{T^2}{4\pi^2}GM}-R$ と示されるわけですから、人工衛星の質量には無関係です。
また、その速さは $v=\dfrac{2\pi(R+h)}{T}$ で示されるのですが、これもいつも同じであることがわかります。
つまり、どのような人工衛星でも静止衛星になるためには、その質量に関係なく、必ず赤道上空 $36000\:\mathrm{km}$ の高さで周回する必要があります。
赤道上空には今、かなりの数の衛星が
ひしめき合っているといわれています。
その理由は、今まで述べてきたように、
静止衛星が赤道上空 $36000 \:\mathrm{km}$ という
決まった高度にしか許されないからですね。
そのため、先進国が先に打ち上げた衛星の
共同利用が必要です。
また、宇宙飛行士が、船外作業中にねじを一本落としたとすると、そのねじも「衛星」となります。
しかも一日で地球を1周するというものすごいスピードで。
こういった宇宙のごみをスペースデブリと呼んでおり、近年問題になってきています。
なぜかって? だってものすごいスピードで、もし衝突したら・・・!
コメント