RLC並列回路その2 交流の基礎6-2
前回のRLC並列回路でインピーダンスを計算で求めましょう。
RLC並列回路
図のような、抵抗 $R$、 コイル $L$、コンデンサー $C$ からなる並列回路を考えます。この回路全体のインピーダンス $Z$ は次の式になります。
$Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}}$
また、回路全体にかかる電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して、
回路全体を流れる電流 $I=I_0\sin (\omega t + \phi) $ とすると、
$\tan \phi = \dfrac{ \: I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}} = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
インピーダンスや位相の式を RLC直列回路と比べてみると特徴的です。
抵抗やリアクタンスなどを逆数にし、引く順番も逆です。
RLC直列回路
$Z=\sqrt{R^2 + \left(\omega L \:-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2 }$ $\tan \phi = \dfrac{\:\omega L \:- \dfrac{1}{\omega C}\:}{R}$
RLC並列回路
$Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}}$ $\tan \phi = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
それでは、実際に計算を進めていきます。
今回の並列回路ではそれぞれの素子に流れる電流は異なりますが、並列のため、電圧は共通になるはずです。
したがって、電圧を初期位相 0とし、 $V=V_0 \sin \omega t$ とおきます( $V_0$ : 最大値)。
初期位相があっても同じことです。初期位相を 0 にしたのは、計算を楽にするためです。
また、図の回路全体を流れる電流 $I$ は、電圧との位相のずれを $\phi$ とすれば、
$I=I_0 \sin(\omega t +\phi)$
となるはずです。この $\phi$ は普通は $\dfrac{\pi}{2}$ ではありません( $\dfrac{\pi}{2}$ のときもあります)。
それぞれの素子(抵抗、コイル、コンデンサー)を流れる電流を
- 抵抗 ・・・・・・・・・・・ $I_R$
- コイル ・・・・・・・・・ $I_L$
- コンデンサー ・・・ $I_C$
とします。
キルヒホッフの第1法則から電源を流れる電流を $I$ とすると、
$I=I_R+I_L+I_C$
がなりたちます。
抵抗・コイル・コンデンサー流れる電流には $\dfrac{\pi}{2}$ の位相差があります。
したがって、単純に最大値・実効値で、
$I_{0}=I_{R0}+I_{L0}+I_{C0}$
$I_{e}=I_{Re}+I_{Le}+I_{Ce}$
とはならないことに注意してください。( 最大値:$I_{\ast 0}$ 実効値:$I_{\ast e}$)
以下のグラフで確認してください。
抵抗・コイル・コンデンサー に流れる電流
位相差
各素子を流れる電流を考えます。
各素子に共通の電圧がかかりますからそれを $V=V_0\sin \omega t$ とした場合、電圧と電流に関しての位相のずれから、各素子を流れる電流は次のように書けます。
- 抵抗 $R$ を流れる電流 $I_R$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ と同位相
$I_R=I_{R0} \sin \omega t$ - コイル $L$ を流れる電流 $I_L$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れている
$I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$Coil の i は late !
- コンデンサー $C$ を流れる電流 $I_C$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して $\dfrac{\pi}{2}$ 進んでいる
$I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
並列回路を流れる電流 $I$ は、キルヒホッフの第1法則から
$I=I_R+I_L+I_C$
となります。以下の式を代入します。
- $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
- $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$
- $I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
したがって、
$I=I_R+I_L+I_C$
$~~~=I_{R0} \sin \omega t + I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2}) + I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
$~~~=I_{R0} \sin \omega t + ( – I_{L0} \cos \omega t + I_{C0} \cos \omega t ) $
$~~~=I_{R0} \sin \omega t + (I_{C0} – I_{L0} ) \cos \omega t $
三角関数の知識から( 補2 参照)
$a\sin \theta + b\cos \theta =\sqrt{a^2 + b^2} \sin (\theta +\phi ) $
(ただし、$ \phi $ は $\tan \phi =\dfrac{b}{a}$ を満たす)
を用いると、
$~~~=\sqrt{ {I_{R0}}^2 + (I_{C0} – I_{L0})^2} \: \sin (\omega t + \phi) $
$ \phi $ は $\tan \phi =\dfrac{I_{C0} – I_{L0}}{I_{R0}}$ を満たします。
ここで、
- $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
- $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
- $I_{C0}=\omega CV_0$
を代入すると、
$~~~ = \sqrt{ \left ( \dfrac {V_0}{R} \right)^2 + \left (\omega CV_0 – \dfrac{V_0}{\omega L} \right )^2 } \:\: \sin (\omega t + \phi) $
$ I = \sqrt{ \left ( \dfrac {1}{R} \right)^2 + \left (\omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2 } \:\: V_0 \sin (\omega t + \phi) $
これとオームの式 $I=\dfrac{V}{R}$ を比較し、回路全体の抵抗成分として、インピーダンス $Z$ を
$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{ \left ( \dfrac {1}{R} \right)^2 +\left (\omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2 }}$
$\tan \phi = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
とします。そうすると、
$ I = \dfrac{1}{Z} V_0 \sin (\omega t + \phi)$ これは、
$~~~=I_0 \sin(\omega t + \phi)$ のはずだから、
よって、
$I_0=\dfrac{V_0}{Z}$
また、実効値は $I_e=\dfrac{I_0}{\sqrt{2}}$ $V_e=\dfrac{V_0}{\sqrt{2}}$ だから、
$I_e=\dfrac{V_e}{Z}$
まとめ
抵抗を流れる電流 $I_R$ コイルを流れる電流 $I_L$ コンデンサーを流れる電流 $I_C$
各素子を流れる電流の最大値と実効値
- 回路全体・・・・・・最大値 $I_0$ 実効値 $I_e$
- 抵抗・・・・・・・・・・最大値 $I_{R0}$ 実効値 $I_{Re}$
- コイル・・・・・・・・最大値 $I_{L0}$ 実効値 $I_{Le}$
- コンデンサー・・最大値 $I_{C0}$ 実効値 $I_{Ce}$
RLC(LCR)並列回路においては、回路全体にかかる電圧を $V=V_0\sin \omega t$ ととする。
- $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
- $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$
- $I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
- $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
- $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
- $I_{C0}=\omega CV_0$
- $I_{Re}=\dfrac {V_e}{R}$
- $I_{Le}=\dfrac{V_e}{\omega L}$
- $I_{Ce}=\omega CV_e$
$I=I_R+I_L+I_C$
注意!! $I_{0}=I_{R0}+I_{L0}+I_{C0}$ $I_{e}=I_{Re}+I_{Le}+I_{Ce}$ とはなりません。
- $I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$
- $I_0=\sqrt{\dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_0$
- $I_{e}=\sqrt{{I_{Re}}^2+(I_{Ce} \:- I_{Le})^2}$
- $I_e=\sqrt{ \dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_e$
この $Z$ を交流回路における抵抗成分と考え、インピーダンスと呼びます。
$I_0=\dfrac{V_0}{Z}$
$I_e=\dfrac{V_e}{Z}$
$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}} $
RLC並列回路にかかる電圧と回路全体を流れる電流の位相差 $\phi$ は、
$\tan \phi = \dfrac{ \: I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}} = \dfrac{\: \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
ベクトル的な考え方・三角関数を考えかたも、RLC直列回路も並列回路も考え方は同じことです。
補 三角関数
補1 加法定理
$\sin(a \pm b)=\sin a \cos b \pm \cos a \sin b$
$\cos(a \pm b)=\cos a \cos b \mp \sin a \sin b$
$\sin(\omega t \pm \dfrac{\pi}{2})=\sin\omega t \cos \dfrac{\pi}{2} \pm \cos\omega t \sin \dfrac{\pi}{2}$
$~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~=\pm \cos\omega t \sin \dfrac{\pi}{2}$
補2 三角関数の合成
$a\sin \theta + b\cos \theta =\sqrt{a^2 + b^2} \sin (\theta +\phi ) $
(ただし、$ \phi $ は $\tan \phi =\dfrac{b}{a}$ を満たす)
上式の右辺から加法定理より、
$\sqrt{a^2 + b^2} \sin (\theta +\phi )=\sqrt{a^2 + b^2} (\sin \theta \cos\phi + \cos \theta \sin\phi ) \:\cdots \cdots \:(\ast)$
ここで、 $\tan \phi =\dfrac{b}{a}$ であるから、図を参考に、
$\cos\phi=\dfrac{a}{\sqrt{a^2 + b^2}}$
$\sin\phi=\dfrac{b}{\sqrt{a^2 + b^2}}$
これらを式 $(\ast)$ へ代入すると、
$\sqrt{a^2 + b^2} \sin (\theta +\phi )=\sqrt{a^2 + b^2} (\sin \theta \cos\phi + \cos \theta \sin\phi ) $
$~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~=\sqrt{a^2 + b^2} (\sin \theta \dfrac{a}{\sqrt{a^2 + b^2}} + \cos \theta \dfrac{b}{\sqrt{a^2 + b^2}} ) $
$~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~=a\sin \theta + b\cos \theta$
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