等速円運動
等速円運動は単振動、そしてその先にある波動にも関係する重要な箇所です。
この単元の理解をしっかりしておくことが必要です。
等速円運動に出てくる式関係をしっかり導出できるようにしておきましょう。
ラジアン
まず、重要なことはラジアンです。
ここの理解があやふやだと、等速円運動についてもあやしくなります。
次の記事を参照してください。
ここでは簡単にラジアンの復習をしておきます。
上の図にあるように、角度 $\theta$ をラジアンで示した場合、角度 $\theta$ で切り取られる半径 $1$ の円周長さが $\theta$ です。
したがって、半径 $r$ の場合、角度 $\theta$ で切り取られる円周長さ $l$ は比例の関係から半径 $1$ の $r$ 倍ですから、$l=r\theta$ となります。
$l=r\theta$
この関係をよく頭に入れておきましょう。
等速円運動
次のアニメーションGIFにあるように、等速円運動とは文字通り「等速」で「円運動」するだけです。
このような運動に必要な力 $F$ やその角速度 $\omega$ ・速度 $v$ ・加速度 $a$ 、周期 $T$・回転数 $n$ などについて解説をしていきます。
角速度 $\omega$
物体が等速円運動して、時間 $t$ の間に角度 $\theta$ だけ回転したとします。
このとき、回転運動の大事な物理量として角速度 $\omega$ が定義されます。
$\omega=\dfrac{\theta}{t}$
すなわちこれは、単位時間 $(1\:s)$ に回転する回転角のことです。
角速度は回転運動特有の物理量ですが、直線運動の速度 $v$ の回転運動版だとも言えます。
等速円運動であるときは、$\omega$ は一定に保たれます。
$\omega$ は回転運動、単振動、波動
においても非常に重要な概念です。
速度 $v$
$v$ は物体が接線方向に持つ速度です。これは、方向は常に変化していますが、等速円運動の場合は、その大きさは同じです。
ここで速度 $v$ と角速度 $\omega$ の関係を考えてみましょう。
物体が時間 $t$ の間に、角度 $\theta$ だけ回転したとします。
そうすると、物体が円周上を動いた距離 $x$ は、ラジアンの関係から、$x=r\theta$ となります。
速さ=距離÷時間 ですから、$\omega=\dfrac{\theta}{t}$ を使って、
$v=\dfrac{x}{t}=\dfrac{r\theta}{t}=r\omega$
となります。
というか、角速度の定義が1秒間に回転する角度 $\mathrm{rad}$ ですから、円周上を1秒間に回る距離(これが速さ)は、ラジアンの定義から、$r\omega $ ですね。
したがって、$v=r\omega$
です。これは非常に重要な式です。
周期 $T$
周期は $T$ で示され、1回転する時間を意味しています。
要するに円を一回、回るのに要する時間のことです。
以下のアニメーションで、運動する物体が、赤く点滅する間の時間です。
このとき、円の一周(時間 $T$)で角度 $360^\circ=2\pi \: \: \mathrm{rad}$ 回るのですから、角速度 $\omega$ は
$\omega=\dfrac{\theta}{t}=\dfrac{2\pi}{T}$
$T=\dfrac{2\pi }{\omega}$
あるいは、円周は、半径 $r$ のときには $2\pi r$ で示されますから、物体が円を一周する時間、周期 $T$ とすると、
$速さ=距離÷時間$ より、
$v=\dfrac{2\pi r}{T}$
$T=\dfrac{2\pi r}{v}=\dfrac{2\pi }{\omega}$
が得られます。
回転数 $n$
回転数は、単位時間 $(1\:s)$ あたりに回転する回数です。
たとえば、1秒に1回転するなら回転数は、$1\:\mathrm{回/s}$ です。2秒で1回転するなら、$0.5 \:\mathrm{回/s}$、0.1秒で1回転するなら、$10\:\mathrm{回/s}$ です。
周期 $\mathrm{[s]}$ | 1 | 2 | 4 | 0.1 |
回転数 $\mathrm{[Hz]}$ | 1 | $\frac{1}{2}$ | $\frac{1}{4}$ | $\frac{1}{0.1}=10$ |
つまり、周期と回転数の関係は逆数の関係です。
よって、
$n=\dfrac{1}{T}$
です。
よって、$\omega=\dfrac{2\pi}{T}=2\pi n$
加速度 $a$
さて、この加速度でつまづく人も多いようです。
等速円運動の加速度・・!といわれて、最初は多くの人は $0$ と思ってしまいます。
なぜか?それは加速度定義として、$a=\dfrac{v-v_0}{t}$ と学習してきたからでしょう。
この式ではたしかに、等速 $v=v_0$ なら $a=0$ です。
しかし、等速円運動においても加速度は存在します。等速なのに・・・!
加速度と速度はともにベクトル量であることを忘れてはいけません。
先ほどの式はベクトルの意味を込めると、$\vec{a}=\dfrac{\vec{v}-\vec{v_0}}{t}$ と書くべきところです。
したがって、物体の運動する方向が変化する場合は $\vec{v}-\vec{v_0}$ が $0$ とはならず、したがって、$\vec{a}$ も $0$ とはなりません。
ところで、もし、等速円運動をしている途中で、物体をつないでいる糸が切れたらどうなるでしょうか?
これは日常の感覚と違っているのでなかなか難しい部類に入ります。
次のアニメを見てみましょう。
この図ではちょうど $x$ 軸のところで、赤い糸が切れています。
そのとき、物体は $y$ 軸と平行な方向(図の上方向)へ飛んでいき、等速直線運動を行います。
なぜでしょうか?
速度を示す緑の矢印に注目してください。
糸が切れた瞬間、物体は $y$ 軸と平行な方向(図の上方向)に速度を持っています。
したがって、糸の束縛がなくなった状態では、そのまま $y$ 軸と平行な方向に飛んでいくことになるのです。
日常的な感覚では、回転の外側、
すなわち $x$ 軸の方向へ飛ぶ!
というのが普通の感覚ですね。
このとき物体は、その速度の方向を、回転運動の瞬間瞬間で変えることで、等速円運動をしていることがわかります。
この速度を変化させることが糸の役割なのです。
糸の張力は、まさしくこの物体の速度(の方向)を常に変えているわけです。
ここで、ニュートンの運動の第2法則 $m\vec{a}=\vec{F}$ により、加速度 $\vec{a}$ と力 $\vec{F}$ の方向は同じです。
したがって、等速円運動の加速度 $\vec{a}$ は張力 $\vec{S}$ の向きと同じです。
つまり、加速度の向きは、常に回転の中心に向いています。
微積による導出
幾何学的な方法による導出については、
の中の等速円運動に関する記事を参照してください。
ここで、円運動している物体の座標を $(x,y)$ とおいて、時間微分することにより、物体の速度を出してみます。
$(x,y)=(r\cos\theta,\: r\sin\theta)$
ここでは、 $\omega=\dfrac{\theta}{t}$ より、 $\theta=\omega t$
よって、
$(x,y)=(r\cos\theta,\: r\sin\theta)=(r\cos\omega t,\: r\sin\omega t)$
$v$ は、$(x,y)$ を一階微分して得られるから、
$v=(v_x, \: v_y)$
$~~=(\dfrac{dx}{dt} , \: \dfrac{dy}{dt})$
$~~=(\dfrac{d}{dt}r\cos\omega t , \: \dfrac{d}{dt}r\sin\omega t)$
$~~=(-r\omega \sin\omega t, \: r\omega\cos\omega t)$
これより、$v$ の大きさは、
$v=\sqrt{(-r\omega \sin\omega t)^2+(r\omega\cos\omega t)^2}$
$v=r\omega$
となります。
さて、加速度は速度を時間微分して得ます。
すなわち、
$a=(a_x, \: a_y)$
$~~=(\dfrac{dv_x}{dt}, \: \dfrac{dv_y}{dt})$
$~~=(\dfrac{d}{dt}(-r\omega \sin\omega t), \: \dfrac{d}{dt}(r\omega\cos\omega t))$
$~~=(-r\omega^2 \cos\omega t, \: -r\omega^2\sin\omega t)$
したがって、$a$ の大きさは、
$a=\sqrt{(-r\omega^2 \cos\omega t)^2+(-r\omega^2\sin\omega t)^2}$
$a=r\omega^2$
となります。これが常に円運動の中心を向いています。
また、$v=r\omega$ ですので、これを適宜代入することによりいくつかの式を得ます。
$a=r\omega^2$
$a=\dfrac{v^2}{r}$
$a=v\omega$
です。いずれも使えるようにしてください。一つ覚えれば十分です。
向心力 $F$
ここまで来たら、回転させるための力・・向心力を求めるのは簡単です。
ニュートンの運動方程式より、
$F=ma=m\times(r\omega^2)=mr\omega^2$
同様にいくつかの式を得ます。
この力は等速円運動においてはいつも回転中心を向いています。
$F=mr\omega^2$
$F=m\dfrac{v^2}{r}$
$F=mv\omega$
ですが、これらの式は、加速度をわかっていれば当然ですので、別段覚える必要はありません。
まとめ
等速円運動についての式
暗記するのではなく、導出できるようにしましょう。
$\omega=\dfrac{\theta}{t}=\dfrac{2\pi}{T}=2\pi n$
$T=\dfrac{1}{n}$
$v=\dfrac{2\pi r}{T}=r\omega$
$a=r\omega^2$ $a=\dfrac{v^2}{r}$ $a=v\omega$
$F=mr\omega^2$ $F=m\dfrac{v^2}{r}$ $F=mv\omega$
この記事も参考に
コメント
rθ=vtの式で、rの単位は[m],vの単位は[m/s],tの単位は[s]となり、θには単位はつきません。さらに,
θ/t=ω とすると、ωの単位は[1/s]となります。この時、ωは角速度ではなく角回転数で、ω =2πfならfは回転数で単位は[1/s]となります。このようにωは角速度と角回転数の両方で使われてきたのです。
さらに言えば、電気工学で、sinωt=sin2πft となります。ωの名称は角振動数です。
こうなった理由は、数学で弧度法の定義が甘かったからと思います。
私が驚いたのは、等速円運動で速度10[radm/s]という高校物理学教科書の記述です。糸が切れて等速直線運動10[m/s]になったら[rad]が魔法のように消えることになることです。