コンデンサー極板の及ぼしあう力
コンデンサー内の電場を $E$ とし、極板上の電荷を $Q$ とした場合、コンデンサー極板が受ける力の大きさ $F$ は $F=\dfrac{1}{2}QE$ で示されます。
よくある問題をやってみましょう。
例題
極板面積 $S$ 、極板間隔 $d$ のコンデンサーに電荷 $Q$ を与えた。誘電率を $\varepsilon$ とする。以下の問いに答えよ。
- コンデンサー内の電場 $E$ を求めよ。
- コンデンサーの蓄えている静電エネルギー $U$ を求めよ。
- コンデンサーを電池から切り離した状態で、極板間隔を微小距離 $\Delta d$ だけゆっくりと広げた。
このときの静電エネルギーの増加量 $\Delta U$ を求めよ。 - 極板間の及ぼしあう引力 $F$ を求めよ。
- 4の力 $F$ を $E$ と $Q$ を使って示せ。
答え
1. コンデンサー内の電場 $E$ を求めよ。
$E=\dfrac{V}{d}$ $Q=CV$ $C=\varepsilon\dfrac{S}{d}$ より、
$E=\dfrac{Q}{Cd}=\dfrac{Q}{\left( \varepsilon \frac{S}{d} \right)d} $
$E=\dfrac{Q}{\varepsilon S}$
2. コンデンサーの蓄えている静電エネルギー $U$ を求めよ。
$C=\varepsilon\dfrac{S}{d}$ と、静電エネルギーの式から
\begin{eqnarray}
U&=&\dfrac{1}{2}QV\\\\
&=&\dfrac{Q^2}{2C}\\\\
&=&\dfrac{Q^2}{2\left( \varepsilon \frac{S}{d} \right)}\\\\
&=&\dfrac{dQ^2}{2\varepsilon S}
\end{eqnarray}
3. コンデンサーを電池から切り離した状態で、極板間隔を微小距離 $\Delta d$ だけゆっくりと広げた。 このときの静電エネルギーの増加量 $\Delta U$ を求めよ。
極板間隔を $\Delta d$ だけ広げた後のエネルギーを $U’$ とすると、2の結果から、
\begin{eqnarray}
U’&=&\dfrac{(d+\Delta d)Q^2}{2\varepsilon S}\\\\
\end{eqnarray}
よって、 $\Delta U=U’-U$ は、
\begin{eqnarray}
\Delta U&=&U’-U\\\\
&=&\dfrac{(d+\Delta d)Q^2}{2\varepsilon S}-\dfrac{dQ^2}{2\varepsilon S}\\\\
&=&\dfrac{\Delta dQ^2}{2\varepsilon S}\\\\
\end{eqnarray}
4. 極板間の及ぼしあう引力 $F$ を求めよ。
エネルギーの原理から
$U+W=U’$
よって $W=F\Delta d=U’-U=\Delta U$
\begin{eqnarray}
F\Delta d&=&\Delta U\\\\
&=&\dfrac{\Delta dQ^2}{2\varepsilon S}\\\\
F&=&\dfrac{Q^2}{2\varepsilon S}
\end{eqnarray}
5. 4の力 $F$ を $E$ と $Q$ を使って示せ。
1と4の結果から
$F=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon S}$
$E=\dfrac{Q}{\varepsilon S}$
より、
$F=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon S}$
$~~=\dfrac {1}{2}QE$
このように、コンデンサー内の電場を $E$ とし、極板上の電荷を $Q$ とした場合、コンデンサー極板が受ける力の大きさ $F$ は $F=\dfrac{1}{2}QE$ で示されます。
$F=QE$ ではないことに注意しましょう。
なぜ $F=\dfrac{1}{2}QE$ なのか?
電荷 $q$ が電場 $E$ から受ける力 $F$ の計算は $F=qE$ です。
コンデンサーの極板はそれぞれ電荷 $Q$ 、$-Q$ を持っています。
コンデンサー内の電場の大きさは $E$ です。
では、コンデンサー極板の受ける力の大きさは $F=QE$ ではないか? と多くの人が勘違いします。
なぜ、$\frac{1}{2}$ が付くのでしょうか?
この電荷 $q$ が電場 $E$ から受ける力の式、 $F=qE$ の状況をもう一度思い出してみましょう。
空間に電荷 $Q$ があり、その電荷が作る電場が $E$ であり、その電場に電荷 $q$ を置いたときに、及ぼされる力が $F=qE$ です。
たとえて言うなら、電荷 $Q$ による電場が次の図の膜である場合、電荷 $q$ は膜上の小球に相当します。このあたりは、 イメージでわかる電場の基礎 を参照してください。
したがって、その電場 $E$ には、その電場に置かれた電荷 $q$ は寄与していません。
感覚的に考えて、電荷 $q$ が作る電場が影響するようにも思いますが、そうではないことに注意しましょう。
したがって、コンデンサーの片側の極板が受ける力は、相手の極板による電場から受ける力のみです。
コンデンサー内の電場が $E$ で示されるとき、片側の極板にある電荷が作るコンデンサー内の電場は $\frac{1}{2}E$ です。
つまり、それらが二つあるから、コンデンサー内の電場は $\frac{1}{2}E+\frac{1}{2}E=E$ となると考えられます。
そのため、コンデンサーの片側の極板が受ける力は $F=qE$ より、$F=Q\times \left(\dfrac{1}{2}E\right)=\dfrac{1}{2}QE$ となるのです。
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