渦電流

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渦電流

渦電流とは、電磁誘導により金属板上などで、誘導電流が渦状に流れるという現象です。

この現象を応用したものに、IH(Induction Heating)があります。
IHは電磁誘導により鍋自体が熱くなるのです。

こんなやつです ↓ 。

火を用いることなく、渦電流により鍋自体を加熱することができるため、熱損失が少ない、効率が高く安全性も高い、といいことづくめです。

他ではIHケトルですね。

実際に、水などを沸かしたりしてみると、驚くほど早く沸いてくれます。
拙宅の T-Fal など、すぐに沸いて最初のころは驚きでした。

これらは電磁誘導を利用しているため、金属の鍋である必要があります。
だから土鍋は無理ということになるのですが、世の中には IH がOKの土鍋もあります。
これは、鍋の底部に金属を仕込んでいるというわけですね。

今回は、これらに使われている「渦電流」について解説していきます。

電磁誘導

渦電流電磁誘導の一種です。
電磁誘導ではコイルや導体棒のようなものが登場しますが、渦電流ではそれが金属板に変わります。
しかし、それらの原理は同じ。

ICチップを含んだクレジットカードや鉄道などの定期券、充電器のワイヤレス充電も電磁誘導の原理を利用しています。

したがって、まず電磁誘導を理解する必要があります。
電磁誘導の記事はこちらです。

電磁誘導
コイルに対して磁石を動かす、磁石に対してコイルを動かす・・・・こういう場合にコイルには起電力が生じ、回路を作ってやると誘導電流が流れます。 または磁場中で導体棒を動かすときも誘導起電力が生じます。 今回は、電磁誘導について解説します。

 

電磁誘導を簡単におさらいしておくと、磁石とコイルが相対的に運動しているときにコイルに誘導起電力が生じ、回路を作ってやると誘導電流が流れるというものです。

ファラデー電磁誘導の法則では、コイルを貫く磁束の単位時間当たりの変化量で誘導起電力を計算できます。

$V=-N\dfrac{\Delta \Phi}{\Delta t}$

渦電流は、コイルの代わりに金属板があると考えましょう。
つまり、金属板は無数の導線が集まったコイルであると考えればわかりやすいと思います。

その金属板上で磁石を動かしてやると、次図のようにN極を下にした場合、運動する磁石前方には反時計回りの電場が生じて上向きの磁場が生じます。
後方では、時計回りの電場が生じて下向きの磁場が生じることになります。

磁石の前方では磁石が運動するとコイル(金属板)を貫く磁束が増えます。その結果、レンツの法則により、その磁場を打ち消す向きに磁場を生じるようにコイル(金属板)に電場が生じ誘導電流が流れるのです。

この時の誘導電流が、金属板上を渦のように円を描いて流れるため「渦電流」と呼びます。

このような場合、コイルを動かすには手ごたえを感じるはずで、それに逆らって磁石を動かすとき手は仕事をします。
その仕事が電気エネルギーに変換されるのです。

IHの仕組み

こういった現象はなにも磁石を動かす必要はなく、金属板を貫く磁束が変化すればよいので、次の図のようにしても渦電流は生じます。

図では電源に交流を用いています。こうすると、コイルの作る磁場が次々と変化しますね。
そうすると、金属板を貫く磁束も常に変化するため、ファラデー電磁誘導の法則により、金属板上に誘導電流である渦電流が流れます。

これがIHの基本的な仕組みです。この渦電流が流れることでジュール熱を発生し、金属板(鍋)自体が発熱します。
そのため、エネルギーの損失が非常に少なくなり、高効率であるのです。

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1円玉は磁石にくっつくか?

1円玉はアルミニウムですので磁石にはつきません。(厳密にいうと、アルミニウムは常磁性体なので少し磁石にくっつきます。が、その力は弱く通常では目立ちません)

しかし、渦電流を利用してやると1円玉は軽いため、見事に磁石に反応します。

次の図のように、ネオジム磁石を1円玉の上に置いて手で磁石だけを急に引っ張ると・・・。
そうすると、1円玉は磁石にくっついてきます。

これは、1円玉を貫く磁束が急激に減少するため、レンツの法則により、磁束の減少を補うように、1円玉上で誘導電流が流れるためです。

そうすると、図では1円玉の上側がS極になりますから、磁石のN極と引き合うため、1円玉は浮き上がります。

近年、ネオジム磁石は手軽に手に入るようになりました。
amazonや100均でも売られています。

銅パイプ中を落下するネオジム磁石の運動

銅は反磁性体です。反磁性体とは、磁石とは弱く反発しあうという性質をもつ物質です。
したがってネオジム磁石と銅パイプはくっつくことはありません。

銅パイプにネオジム磁石を落としてみましょう。
これはなかなか見ものです。

上から銅パイプの中をのぞいていると、ネオジム磁石がゆらゆらと非常にゆっくりと落下していくのが見えるはずです。

この現象も渦電流で説明できます。

図にあるように、コイルの落下につれて、銅パイプのある断面を考えた時、そこを貫く磁束が増加します。
そのため、銅パイプにはレンツの法則により、上向きの磁束を作るような誘導電流が流れるのです。

図の例では、磁石のN極にたいして、銅パイプではN極を上にした磁場を作りますから、反発しあってなかなか磁石が落ちてこない、というわけです。

他の電磁誘導の例

渦電流というわけではありませんが、同じような原理の電磁誘導を利用したものは、身近なところでは電動歯ブラシのワイヤレス充電があります。
洗面所など水が近い場所では、充電もワイヤレスのほうが何かと安心でしょう。

他は、ICチップ搭載のカード。これは例えば、鉄道の定期券やクレジットカードなどに使われています。最近ではマイナンバーカードに搭載されています。


https://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kusei/kojinbangoucardsinsei.html

電磁誘導によりカードにあるループコイルに電流を流し、ICチップを作動させるわけですね。

このように私たちの生活に欠かせない重要な技術となっています。

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