物理のエッセンス 電磁気71番
概要
図のように画面の表から裏に向かう方向に磁束密度 $B(x)$ がかけられている。
ここで、 磁束密度は $B(x) = Kx$ ( 注:$K$ 正の定数とする ) で変化する。
辺の長さ $a$、$b$ 長方形コイルを置いて、速さ $v$ の等速で $+x$ 方向に動かす。
解説
普通よくある問題として、長方形コイルを一様な磁場中で運動させても誘導起電力は発生しない、というものがあります。
誘導起電力の大きさ
この問題の場合、磁場が一様でないため、コイルを運動させると、コイルを貫く磁束が変化することに注意します。
したがって、コイルには誘導起電力が生じることになります。
ファラデー電磁誘導の法則によると、誘導起電力 $V$ は、
$V=-N\dfrac{\Delta \Phi}{\Delta t}$
で示されます。
ここで、磁束密度 $B$ は $x$ の関数なので $B(x)$ と書くことにすると、
$\Phi(x) = B(x)S$ $S=ab$
より、
$\Phi(x) = B(x)S=abB(x)$
$V=\left | -N\dfrac{\Delta \Phi(x)}{\Delta t} \right |$
$V =\left | -\dfrac{ab\Delta B(x)}{\Delta t} \right |$
$~~~~=\left |-ab\dfrac{\Delta B(x)}{\Delta t} \right |$
$~~~~=\left | -ab\dfrac{\Delta Kx}{\Delta t} \right |$
$~~~~=\left |-Kab\dfrac{\Delta x}{\Delta t} \right |$
$\dfrac{\Delta x}{\Delta t} = v$ として、
$V=Kabv$
ファラデー電磁誘導の法則は微分形では、
$V=-N\dfrac{\mathrm{d} \Phi}{\mathrm{d} t}$
と考えられますね。
誘導起電力の向き
これはレンツの法則から考えてみます。
図のコイルが $x$ の正方向へ運動すると、コイルを貫く磁束(画面の表から裏向き)が増加します。
したがって、レンツの法則により、コイルにはこの磁束変化を妨げるような磁場を生じさせるように電圧がかかり電流が流れます。
つまり、画面の裏から表に向かう磁束がコイルにより生じるように電圧がかかり電流が流れることになります。
右手の法則から、反時計回りに電流が流れるように誘導起電力が生じるはずですから、 $Q\:\rightarrow\:P$ の向きということになります。
他の解法
$V=vBl$ の式を用いて考えましょう。
そうすると、コイルの左端がある位置 $x$ であるとすると、コイルの右端は $x+a$ です。
- 左端での $V_{\mathrm{左}}=vB(x)b$
- 右端での $V_{\mathrm{右}}=vB(x+a)b$
コイルの右端と左端での誘電起電力の向きはローレンツ力(導線内の電子は $P\:\rightarrow\: Q$ の向きに力を受ける)を考えて図のようになります。
もしも、一様な磁場中なら $V_{\mathrm{左}}$ も $V_{\mathrm{右}}$ も同じ大きさのため、回路に電流は流れません。
ここでは、 $B(x+b)\:>\:B(x)$ であることから、
$V_{\mathrm{右}} \:>\:V_{\mathrm{左}}$
は明らかです。よって、誘電電流は $Q\:\rightarrow\: P$ の向きに流れます。
コイル全体に生じる誘導起電力の大きさ $V$ は $V_{\mathrm{右}}$ と $V_{\mathrm{左}} $ の差をとって
$V=V_{\mathrm{右}}\:-\:V_{\mathrm{左}}$
$~~~=vB(x+a)b\:-\:vB(x)b$
問題から $B(x)=Kx$ であるから、
$B(x)=Kx$ , $B(x+a)=K(x+a)$
を代入します。
よって、
$V=vB(x+b)a\:-\:vB(x)a$
$~~~=vK(x+b)a\:-\:vKxa$
以上より、
$V=Kabv$
$Q\:\rightarrow\:P$ の向き
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