剛体の作図の際に知っておくべきたった一つのことを伝えます。
これさえ理解できればもう怖くありません。
剛体
剛体は理想的な物体であり、力を受けても変形しません。
世の中の物質で力を受けて変形しないものは存在しないはずです。
しかし、ここでは実際上変形が無視できるものとして考えていきます。めちゃくちゃ硬いんですね。
問題
摩擦のある床となめらかな壁がある。
その壁に長さ L の一様な棒を立て掛けたところ静止した。
さて、このとき棒の下端が床から受ける摩擦力と垂直抗力の合力(抗力)は図のいずれの方向か、一つ選んで答えよ。
また、その理由も述べること。
このとき、棒が床から受ける抗力の方向は 1 つに決まります。
え?棒の重さや摩擦係数は考えなくてもいいのでしょうか?
実はこのとき、作図方法を知っているか知らないかで大きな差が出るのです。
この物体は静止しています。
したがって、釣り合い状態にあるのです。
これらのことをしっかり踏まえた上で考えていきましょう。
センター試験にも過去、同様の問題が出題されたことがあります。
しかし、この正答率はかなり低かったらしいですね。
センター試験の小問集合ではこのような「簡単なようで実は難しい!」という問題が出る傾向にあります。
式や解法パターンの暗記など小手先の対応をせず、物理的な背景や意味を普段からしっかり考えるべきです。
剛体の釣り合い
剛体の釣り合い状態とは、
合力が 0 になること
任意点まわりのモーメント総和が 0 である(釣り合っている)こと
の2点が必要です。
ここで、「任意点まわり」に注目しましょう。
任意点とは「どこでもいい」「あらゆる点」という意味です。
まず、なぜ「あらゆる点」が許されるのでしょうか?
それは簡単です。この剛体は静止しているため、はたらく力がつり合っているからですね。
もう少し詳しく説明すると、
もし、ある点(どこでもよい:物体上とは限らない)まわりのモーメントが 0 ではないとしましょう。
ということは、その点まわりにモーメントが生じているはずです。
つまりその点のまわりに物体などを回転させようという力が働いていることになります。
しかし、それは物体が静止しているという前提条件に反しています。
したがって、あらゆる点まわりにおいてモーメントは 0 である必要があるというわけです。
簡単な話ですが、意外と認識されていないのが現状です。
押さえておくべきたった一つのこと!
それではこの問題に関して、どう考えればいいのでしょうか?
壁からの垂直抗力 N 、 棒に働く重力 W (一様な棒なので真ん中にあるはずです)の 2 力を考えます。
この 2 力の作用線を延長するとある 1 点で交わります。
床からの抗力 R の作用線を延長してやると物体が静止している限り、絶対にこの交点を通過するのです。
こうして考えてやると、瞬時に解くことができますね。答えは 図の通りです。これしかありません。
不思議なことに、この交点は重力や垂直抗力の大きさでは変わることがなくいつも同じ位置です。
動画で解説
なぜだろうか?
ではなぜ、1 点に集まるのでしょうか?
今仮に、垂直抗力 N と重力 W の交点から抗力 R がずれているとしましょう。
そうすると、垂直抗力 N と重力 Wの交点まわりのモーメントが 0 にならず、ある値を持ってしまうことになります。
これはこの交点まわりに物体が回転することを意味します。
しかし、物体は静止しているのですから、前提に反しますね。
よって、3 力を延長してやると必ず 1 点で交わるのです。
剛体はいろいろな問題があります。
剛体の問題で図を描かねばならないとき、時には力をどの方向に描けば良いのか迷うこともあるでしょう。
しかしこの方法を応用してやれば今後、剛体において力を描くときに悩むことはないはずです。
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