いまひとつ、電気力線のイメージが持てない人が多いようですが、電気力線はとても有用な考え方です。
この電気力線をうまく使うと、目に見えない電場に対するイメージが湧き問題を解くのが簡単になります。
この記事では、電場と電気力線についてのイメージを作ることができるよう解説を行っています。
動画で解説
もうちょっとまってください
電場とは
ではまず電場とは?についておさらいをしましょう。
電場とは「電荷の周囲の空間が電気的に変形したもの」でした。
次の記事が参考になります。
もういちど式を確認しましょう。
電荷 $Q$ の回りの電場 $E$ は、電荷からの距離を $r$ とすると、次の式で示されます。$k$:比例定数
$E=k\dfrac{Q}{r^2}$
また電場 $E$ にある電荷 $q$ の物体は、電場から
$F=qE$
の力を受けます。
電気力線とは
では電気力線とはどのようなものでしょうか?
電気力線とはファラデーやマクスウェルにより考え出されたもので、仮想的なものです。
つまり、空間に電気力線というものが実際に存在するわけではないので注意してください。
電気力線のイメージ
たとえば、電場が次のような図にあるような膜でイメージされているとき、ビー玉を転がしてみましょう。
このとき、ビー玉に赤インクをつけておきます。
そうすると、ビー玉が転がったその軌跡にインクで赤いあとが付きますね。
これが電気力線のイメージそのものです。
この電気力線を観察すると、電場の様子が一目瞭然です。
そのため、電気力線は電場の様子を考えるのに非常に適しているのです。
電気力線を引いてみよう
電気力線を描くには、試験電荷のような+に帯電した電荷を仮想的に電場のあちこちにおいてやります。
そしてその電荷が動く方向に矢印を引いてやればよいのです。
例えば、$+Q$ の周囲の電気力線と$-Q$ の回りの電気力線
$+Q$ と $-Q$ の周囲の電気力線と $+Q$ と $+Q$ の周囲の電気力線
$-Q$ と $-Q$ の周囲の電気力線も $+Q$ と $+Q$ と同様(矢印向きは逆)となることは予想できますね。
電気力線の本数
しかし、ここで一つ問題があります。
ビー玉を転がすだけなら、それこそどれだけでもインクの跡をつけることができますから、全体が真っ赤になってしまって電場の様子を知ることができなくなります。
そこで、電気力線を引く本数を決めることにしたのです。
電荷 $Q$ から距離 $r$ では電場の大きさ $E$ とする
電場が $E$ のところでは、電場に垂直な面 $1\:m^2$ に$E\:(=k\dfrac{Q}{r^2})$ 本の割合で電気力線を引く
注:電気力線は仮想的な線なので、整数である必要はありません。
ガウスの法則
そもそも電気力線の引き方を考えるとボールを転がしているのと同様なわけですから、電気力線の本数は途中で増えたり減ったりしないはずですね。
では、「電場が $E$ のところでは、$1\:m^2$ に$E=k\dfrac{Q}{r^2}$ 本の割合で電気力線を引く」のように決めても、近いところと遠いところで本数の辻褄が合うのか心配です。
次のように考えてみましょう。
電荷 $Q$ から距離 $r$ の場所では電場の大きさが $E=k\dfrac{Q}{r^2}$ になります。
この場所においては、$1\:m^2$ に $E=k\dfrac{Q}{r^2}$ 本の電気力線を引くと約束しました。
この本数は $Q$ から出ている全ての電気力線の一部だけです。
電荷 $Q$ から出ている電気力線の総本数 $N$ を調べましょう。
このときの電荷 $Q$ をすっぽりと囲んでしまう半径 $r$ の球を考えます。
$1\:m^2$ に $E=k\dfrac{Q}{r^2}$ 本の電気力線を引くという約束でした。
そして、球の表面積は $S=4\pi r^2$ ですから、総本数 $N$ は、総面積に電場の大きさをかければよく
$N=4\pi r^2\times E$
$~~~~=4\pi r^2\times k\dfrac{Q}{r^2}$
$~~~~=4\pi kQ$
となります。(ガウスの法則)
つまり、$Q$ の電荷から出ている電気力線総本数 $N$ は増えも減りもせず一定で $N=4\pi kQ$ 本です。
逆に言えば、面積 $S$ を垂直に貫く電気力線総本数 $N$ がわかれば、その位置での電場の大きさも簡単に求めることができます。なぜなら、電気力線は電場の大きさ $E$ のところでは $E\:本/m^2$ 引くと約束したからです。
すなわち、$E=\dfrac{N}{S}$
となります。
逆二乗則
クーロンの電気力は、$f=k\dfrac{qQ}{r^2}$ でした。
球の表面積は、$S=4\pi r^2$ ですから、球表面積は半径の二乗に比例して大きくなります。
そうすると、電気力線の数は一定ですから面積で考えた電気力線の密度は「 $r^2$ に反比例していく」はずですね。
ということは $f=qE$ なので、電気力もやはり「 $r^2$ に反比例していく」はずです。
同じように、重力を考えてみましょう。
万有引力の式は次式です。
$f=G\dfrac{mM}{R^2}$
形としてはクーロンの法則の式と同じです。
これを、次のように書き換えましょう。
$f=G\dfrac{mM}{R^2}$
$~~~~=m\times G\dfrac{M}{R^2}$
こうしてやると、質量Mの天体が宇宙にあるだけでその回りの場が変形し、その変形度合を $G\dfrac{M}{R^2}$ で表すこともできそうです。
つまりこの場に沿って進むため、大きな質量を持つ天体の回りでは光さえ曲がるのです。
ちなみにアインシュタインの予想したこの光線の曲がりは、予言通り実際に観測されています。
(太陽が皆既日食のときに、本来見えるはずのない太陽の真後ろにある星が観測されました)
これらの力のように等方的に空間を伝わるもの、重力や磁力、電気力の大きさは「 $r^2$ に反比例していく」として表されるのです。
これを逆二乗則といいます。
一様な電場
コンデンサーを考えます。
次の図のように電荷が配置されている場合、コンデンサーの極板が十分に大きいとき、内部の電気力線を考えてみましょう。
電気力線を描くには+の電荷を想像して、その電荷が動く軌跡を描けばよいのでしたね。
そうすると、電気力線は点電荷のときと違ってお互いに平行に真っ直ぐに描くことができるはずです。
ここで、金魚すくいのポイを思い出してください。
こんなヤツ
そうしてこのポイの面積を $1\:m^2$ にしてやります。
超大きいコンデンサー内部にこのポイをいれてポイを通過する電気力線本数を数えましょう。
そうすると、この場合はどこで数えても同じ数になります。
極板の直ぐそばで数えても、コンデンサーの真ん中で数えても同じ数になることは想像できますね。
ということは、この中の電場の大きさはどこでも一定と言えるのではないでしょうか?
つまり、このような状態が「一様な電場」と言えるものなのです。
このとき電気力線を考えることで非常にイメージがしやすくなります。
コンデンサーと電気力線
コンデンサー内部の電気力線を考えることで電場がどのようになっているのかを容易にイメージできます。
電池から切り離した場合
例えば、コンデンサーを充電したのち電池から切り離しておきます。
このコンデンサーの極板間隔を引き伸ばしましょう。
内部の電場はどうなるのでしょうか?
このとき、電池は切り離されているので極板にたまっている電荷は逃げ場がなく、電気量 $Q$ は変わりません。
したがって、この電荷から出ている電気力線は極板間隔を大きくしようが小さくしようが同じ数のはずです。
ということは、コンデンサー内部は一様な電場であるため、どこをとっても電気力線密度は同じです。
つまり、内部電場はどこでも同じという結論になります。
電池につないだままの場合
では次にコンデンサーを電池につないだまま、極板の間隔を伸ばしてみましょう。
この場合、コンデンサーに貯まる電気量は、極板間隔が大きくなると減少します。
なぜなら、コンデンサーの電気容量 $C$ は $C=\epsilon \dfrac{S}{d} $ なので、極板間隔 $d$ が大きくなれば $C$ は小さくなるからですね。($Q=CV$ より)
ということはこの場合、コンデンサーの極板に貯まる電気量は小さくなるため、電気力線の数も減少するはずです。よって、コンデンサーの内部電場は弱まります。
直列接続した場合
さらに、予め帯電していないコンデンサー各種を直列品切した場合、各コンデンサーに貯まる電気量は同じです。
したがって、各コンデンサーの電気容量に関わらず同じ電場を持つことがわかります。
そのため、試験電荷 $(+1\:[C\:])$ にかかる力はどちらも同じになります。
よて、極板間の距離が長いほうが電圧(試験電荷を運ぶ仕事と考えましょう)が大きくなります。
並列接続した場合
もうひとつ、コンデンサーを平行につないだ場合、各コンデンサーに貯まる電気量はそのコンデンサーの電気容量によって違います。図では、$C\:> \: C\;^\prime $、よって $Q\:> \: Q\;^\prime $
各コンデンサーにかかる電圧は同じですが、電場はそれぞれで違います。
当然、極板間距離が長いほうが電場は弱くなり、電気力線本数も少なくなります。
電圧・電位との関係については次回の記事で!
イメージはできたでしょうか
まとめとして、
- 電荷 $Q$ から距離 $r$ では電場の大きさ $E$ とすると、
電場が $E$ のところでは、$E$ に垂直な面 $1\:m^2$ に$E=k\dfrac{Q}{r^2}$ 本の割合で電気力線を引く - 電荷 $Q$ から出る電気力線総本数 $N$ は、$N=4\pi kQ$ 本
- 空間を伝わる重力、磁力、電気力などは、 $r^2$ に反比例していく
- 一様な電場では電気力線の密度がどこををとっても同じ(コンデンサー内部など)
- コンデンサーなどでは電気力線をイメージすると考えやすくなる
というわけで、今回の記事のまとめとしたいと思います。
イメージの構築は大事です。
アインシュタインは「私はおもにイメージで考える。イメージが固まったら数式で考える」というような意味のことを話したそうですね。
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