物理の問題において、悩ましいものに有効数字の処理方法があります。
有効数字のルールを解説しているページはたくさんありますが、なぜ?についてやさしく解説しているものはあまりないですね。あっても小難しいものが多いようです。
ここでは、機械的に「そうなるんだ!ルールだから!」といわず、なぜそう考えるべきかをイメージを交えながら考えてみました。
いつも、有効数字で減点1されていたあなたもこれでもう大丈夫です。
有効数字 もう迷わない なぜ?を解説
まず大事なことは、物理で出てくるデータの数値は普通は測定値、あるいは測定値から計算した結果です。
したがって、値には必ず不確かさを含んでいます。
←これ重要!
例えば、教科書の縦の長さを測ってみます。その長さには測定時の器具や測定者により必ず違いが出ます。もっと細かいことを言えば、そのときの温度やその他の要因でも違うはずです。
つまり、どんなにがんばっても、測定値には必ず誤差が含まれているのです。
これはどんなに測定器が発達しても同じです。
具体的な例を示します。
ある物体の長さを測定しました。
次の図で、最小目盛りの10分の1まで目分量で読んでいます。
図から明らかなように、測定値の11.1までは正しく、最後の 7 が怪しくなってきますが、7もまあ使える数字と考えます。
この 11.17 cm という測定値の場合、
11.1 までは信頼できる数値、 7 については不確かさを含むが、有効であると考えます。
○が信頼できる数字 △が許容範囲にあると考える数字です。
これで有効数字4桁となります。
では四則演算について有効数字の扱い方について具体的に見ていきましょう。
足し算
足し算した結果、値の最後の数字をもっとも高い位に合わせる。
例
$11.17\:\mathrm{cm}+ 2.1\:\mathrm{cm} = 13.27\:\mathrm{cm}$
有効桁はどこまでとるべきでしょうか?
この場合、2.1 は 1 までが有効のため、答えの 13.27 の最後の 7 の数字は不確かであると考えられます。
したがって、2.1 の 1 の位に答えを合わせます。
具体的には 13.27 の 7 を四捨五入します。
答え $13.3\:\mathrm{cm}$
図で考えて見ましょう。○が信頼できる数字 △が許容範囲にあると考える数字です。
図では、計算結果の 13.27 の13は信頼できる数字。
最後の 7 は×をたしているため、全く信頼できない数字です。
したがって 7 を四捨五入するのが妥当だと考え、答えを 13.3 としています。
引き算
引き算した結果、値の最後の数字をもっとも高い位に合わせる。
例
$11.17\:\mathrm{cm} – 2.1\:\mathrm{cm} = 9.07\:\mathrm{cm}$
有効桁はどこまでとるべきでしょうか?
この場合は、2.1 は 1 までが有効のため、答えの 9.07 の最後の 7 の数字は不確かであると考えられます。
したがって、2.1 の 1 の位に答えを合わせます。
具体的には 9.07 の 7 を四捨五入します。
答え $9.1\:\mathrm{cm}$
図では、計算結果の 9.07 の最後の 7 は全く信頼できない数字です。
したがって、最後の数字の 7 を四捨五入し、答えを 9.1 としています。
掛け算
最も少ない有効数字の桁数とする。
ここでは11.2と2.1の計算について考えます。
例
$11.2\:\mathrm{cm} \times 2.1\:\mathrm{cm} = 23.52\:\mathrm{cm^{2}}$
有効桁はどこまでとるべきでしょうか?
ここで、11.2 は有効3桁で、2.1 は2桁です。したがって、答えの有効数字は2桁にします。
よって、答えは小数1桁目の 5 を四捨五入して $24\:\mathrm{cm^{2}}$
図の赤でしめしたところは不確かさを含みます。
計算結果を見て、5 を四捨五入して 24 とすれば妥当であると考えられます。
割り算
最も少ない有効数字の桁数とする。
ここでは11.2と2.1の計算について考えます。
例
$11.2\:\mathrm{m} \div 2.1\:\mathrm{m/s} = 5.33 \cdots \:\mathrm{s}$
有効桁はどこまでとるべきでしょうか?
ここで、11.2 は有効3桁で、2.1 は2桁です。したがって、答えの有効数字は2桁にします。
よって、答えは少数2桁目の 3 を四捨五入して $ 5.3\:\mathrm{s}$
11.2-10.5 ⇒ 0.7 意味のある数字。
図で、計算結果の5.33の最後の3は信用できず、四捨五入して得られる 5.3 を答えとします。
無理数・整数の扱い
無理数・整数は測定値ではないため、有効桁はありません。
まあ、言ってみれば無限桁有効です。
したがって、$\sqrt{2}=1.41421356 \cdots $ ですが、その計算に用いる測定値の有効桁より、一桁多くとって計算に用います。
例
半径 $r=1.0 \: \mathrm{m}$ の円周の長さを求める。
有効桁はどこまでとるべきでしょうか?
円周の長さは $2\pi r$ です。この 2 や $\pi$ に有効桁はありません。ただし、円の半径が測定値だとすると、1.0 は有効2桁です。
したがって、$\pi=3.141516\cdots $ は $3.14$ として計算に用いましょう。
この半径が 1.00 だったときは有効3桁ですが、 $\pi=3.1415$ はどのようにすべきでしょうか。
この場合、流儀によりますが、通常は小数4桁目の5を四捨五入して 3.142 とすることが多いようです。
注意
例えば次のような場合、有効桁数が変化することがあります。
例
5.6+4.4=11.0
この場合、最後の 0 は有効な数字です。掛け算や割り算のように2桁だ!として最後の 0 を消してはいけません。
なぜでしょうか?
5.6 と 4.4 を棒の長さだと仮定します。
そうすると、ものさしで測ったとき、小数点以下の ○.6 も ○.4 も測定値ですから、その和が 0 になったとしても、それは有効とします。
例
$9.003-9.002=0.001$
この場合は答えは 0.001 ですが、これは $1 \times 10^{-3}$ と書け、有効数字は1桁になります。これを有効数字の「桁落ち」といいます。
この場合、前に 0.00 があるから有効4桁だと考えてはいけません。
この 0.00 は桁あわせの 0 なので、有効数字には入れないのです。
なんだかしっくりこない人も多いようですが、次のように考えましょう。
例えば、1 cm の長さをものさしで測定したとします。
このとき、1 cm という測定値の有効桁数は1です。
次に、 cm の単位を変えてみます。
1 cm = 0.01 m = 0.00001 km
ですが、単位を変えただけですので有効桁数はどれも1のはずです。したがって、 $ 0.000 \cdots $ のように並ぶ 0 は桁あわせとして有効数字に入れません。
例えば、0.000100 の有効桁数は 3桁です。
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