ヤングの実験

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ニュートンの光の粒子説

1700年代 ニュートン(1643-1727)は光は粒子だと考え、万有引力によって光の屈折現象を説明しようとしています。

それによると、光が屈折するのは、光の粒子は万有引力により物体側に加速されるためとしたのです。

この図によると、ニュートンは光の屈折現象の説明に成功しているように見えます。

ただし、この図の説明では、物質中の光の粒子は加速されているので真空中よりも速くなる($v_1<v_2$)はずです。

しかし、光波動説の ホイヘンスの原理 によると物質中の光速は遅くなる($v_1>v_2$) ・・・・のでした。

 


 

光の粒子説と波動説ですが、当時、次に述べるヤングの実験により、光が波動に特有の干渉・回折現象を示すことが示され、光は波動であると考えられていました。

さらに、ニュートンの光の粒子説に終止符を打ったのは、後年の光速度の精密測定実験によります。
これによると、物質中の光速は真空のときよりも遅くなることが示され、ニュートンの波動説とは決定的に異なることがわかったのです。

そして、物質中での光の速さはホイヘンスの原理で予想される値にほぼ一致したため、光の波動説を裏付ける結果となりました。

 

ヤングの実験

では、光の波動説を実証したヤングの実験の装置を次に示します。

一次スリットを通り抜けた光は二次スリットを通って回折・干渉して、スクリーン上に明暗の模様を描きます。

このとき、図のスリット間隔を $d$ 、 $\mathrm{\overline{S_1P}}=l_1$ 、$\mathrm{\overline{S_2P}}=l_2$ とすると、次の式が成り立ちます。

(図は、わかりやすいように誇張して描いてあります)

明線:$|\mathrm{\overline{S_1P}}-\mathrm{\overline{S_2P}}|=|l_1 – l_2|=m\lambda$

暗線:$|\mathrm{\overline{S_1P}}-\mathrm{\overline{S_2P}}|=|l_1 – l_2|=m\lambda + \dfrac{1}{2}\lambda$

$m=0,\:1,\:2,\:3,\: \cdots\cdots$

これらの条件式は波動基礎のものと全く同じです。


 

スリットからスクリーンまでの距離 $l$ 、$\mathrm{\overline{OP}} =x $ とします。

そうすると、$d$ に比べて $l$ の値は非常に大きい($l \gg d$)ため、次の図にあるように、スリット $\mathrm{S_1}$、$\mathrm{S_2}$ を通り P に向かう光線 AA’ と BB’ は平行とみなせます。

よって、直進光との角度を $\theta$ とすると、二つの光線 AA’ と BB’ の行路差 CD は $d\sin\theta$ となります。

ここで、行路差 $d\sin\theta$ の中に $\lambda$ が $m$ 個($m=0,\:1,\:2,\:3,\:\cdots \cdots$)入ればよいので、

$d\sin\theta=m\lambda$

が明線条件です。(上図は $m=1$ の場合)

同じように、 $\dfrac{1}{2}\lambda $ の端数が出る、 $d\sin\theta=m\lambda + \dfrac{1}{2}\lambda$ のとき暗線となります。

 

これらの式がなぜそうなるのか? というのは非常に重要です。
いまひとつ理解が進んでいないならもどって習得しましょう。
波動基礎

 

ところで、$\theta $ (ラジアン)が小さいとき、近似 $\sin\theta\fallingdotseq  \tan\theta  \fallingdotseq  \theta $ が成り立つとします。

近似については、図から考えると次のようになります。

 

$\theta $ が十分小さいときは、

$\sin\theta \fallingdotseq \tan\theta \fallingdotseq \theta $

 

そうすると、次の図から、

$\sin\theta \fallingdotseq \tan\theta \fallingdotseq \dfrac{x}{l} $

となります。

したがって、 $|l_1 – l_2| = d\sin\theta = d\dfrac{x}{l}$ と示されます。

 

よって、

明線:$|l_1 – l_2|=\dfrac{dx}{l}=m\lambda$

暗線:$|l_1 – l_2|=\dfrac{dx}{l}=m\lambda + \dfrac{1}{2}\lambda$

$m=0,\:1,\:2,\:3,\: \cdots\cdots$

 

より、変形して、

明線:$x=m\dfrac{l\lambda}{d}$

暗線:$x =m\dfrac{l\lambda}{d} +  \dfrac{l\lambda}{2d}=\left (m+\dfrac{1}{2} \right ) \dfrac{l\lambda}{d}$

$m=0,\:1,\:2,\:3,\: \cdots\cdots$

 

明線(暗線)の間隔 $\Delta x$

次に、スクリーン上の隣り合う明線や暗線の間隔を $\Delta x$ とすると、

$\Delta x = \dfrac{l\lambda}{d}$

となります。

 

理由

中心 O の明線を $x_0$ とし、スクリーン上上下にある明線の位置を $x_m $ で示す。

$x_m = m\dfrac{l\lambda}{d}$

よって、 次の明線を $x_{m+1} = (m+1)\dfrac{l\lambda}{d}$ とおける。

ゆえに、その差は $\Delta x$ となり、

$\Delta x= x_{m+1}-x_m$

$~~~~~ =(m+1)\dfrac{l\lambda}{d} –  m\dfrac{l\lambda}{d}$

 

$\Delta x = \dfrac{l\lambda}{d}$

単スリットの回折・干渉

単スリットも回折・干渉します。

くわしくは、次の記事で。

単スリットの回折・干渉
単スリットというのは普通、教科書には記載されていませんし、参考書にもあまり解説されていません。しかし、難関といわれるところではときどき出題されます。一度目を通しておいて損はありません。

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