加速度は、物理を勉強するときでも、最初のほうで出てくる事柄です。
加速度って、物理ではものすごく基本的なことなのですが、日常生活では厳密な意味で使うことは、あまりありません。
そのためか、意外とあやふやだったりします。
しかし、物理で加速度があやふやだということは、その後のほぼすべてのことについて、あやふやなままです。
加速度の「公式」など、数Ⅱで習う簡単な微積が理解できていれば、覚えることはほぼありません。
ただの「公式」暗記だけにとどまらず、その意味についてよく理解しておきましょう。
加速度
直線運動の加速度
一直線上を運動する物体の速度変化について考えましょう。
一直線上を運動しているある物体の速度が、時間 $\Delta t$ の間に、$v_0$ から $v$ に変化したとすると、
その間の単位時間当たりの、平均の速度の変化量を、平均の加速度といい $\bar{a}$ として示します。
$\bar{a}=\dfrac{v-v_0}{\Delta t}=\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$
この $\Delta t$ を限りなく $0$ に近づけていく( $t$ で微分する)と、瞬間の加速度を得ることができます。
そして、それは $v-t$ グラフの接線の傾きで示されます。$\because \:\: \bar{a}=\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$
単位は $\mathrm{m/s^2}$ で「メートル毎秒毎秒」と読みます。
加速度の向き
直線運動の場合の加速度は、正負の記号でその向きを示すことができます。
例えば、
だんだんと速くなる運動
図で右方向を正の向きとします。
$v>v_0$ であるから、 $\bar{a}=\dfrac{v-v_0}{\Delta t}>0$ となり、加速度のベクトルは図の右方向へ向いています。
だんだんと遅くなる運動
図で右方向を正の向きとします。
$v<v_0$ であるから、 $\bar{a}=\dfrac{v-v_0}{\Delta t}<0$ となり、加速度のベクトルは図の左方向へ向いています。
等加速度直線運動の例
例えば、図の右向きを正として
次の図のように1秒ごとに規則正しく $2\:\mathrm{m/s}$ づつ速くなる場合の加速度は、$2\:\mathrm{m/s^2}$
1秒ごとに規則正しく $2\:\mathrm{m/s}$ づつ遅くなる場合の加速度は、$-2\:\mathrm{m/s^2}$
と示すことができます。
加速度の大きさは、簡単に言うと、1秒あたりにどれだけずつ速くなるか?ということですね。(MKS単位系)
直線運動ではさらに、± で向きを表します。
平面運動の加速度
一般に、運動は一直線上だけではなく、平面、あるいは空間で運動をします。
そのため、加速度についても一般的に考えれば、ベクトル的に考えて次のように表現できます。
ある点から運動したとき、かかった時間が $\Delta t$ で、速度ベクトルが $\vec{v_0}$ から、$\vec{v}$ へと変化したとします。
そのときの加速度ベクトル $\vec{v}$ は、
$\vec{a}=\dfrac{\vec{v}-\vec{v_0}}{\Delta t}=\dfrac{\Delta \vec{v}}{\Delta t}$
で示されます。
一直線上の場合と同様に、$\Delta t$ を限りなく $0$ に近づけると( $t$ で微分すると)、瞬間の加速度を得ることができます。
等加速度直線運動
問題を考えるときは、2次元的・3次元的な運動であっても、変位・速度・加速度を $x-y-z$ 方向などに分解して考えることが多くなります。
そうすると、それぞれの方向では等加速度直線運動を考えればよいので、計算が簡単になります。
加速度が一定であるとすると、
一直線上の運動での加速度を $a$ 、時刻 $t$ での速度、変位をそれぞれ $v$、$x$ とし、時刻 $0$ のとき原点を初速度 $v_0$ で通過したとすれば、
$a=\dfrac{v-v_0}{t}$ より、
$v=v_0+at$
グラフに示すと次の図になります。
この時の変位 $x$ は $v-t$ グラフと $t$ 軸で囲まれる面積であることから、
$x=(v_0\times t)+\left(t\times at\div{2}\right)=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2$
と示されます。
これらの2式から $t$ を消去するため、$v=v_0+at$ より、$t=\dfrac{v-v_0}{a}$ として、$x=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2$ へ代入します。
すると、
$x=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2=v_0(\dfrac{v-v_0}{a})+\dfrac{1}{2}a(\dfrac{v-v_0}{a})^2$
これより、
$v^2-v_0^2=2ax$
を得ます。
微積でやってみよう
積分してみます
まず、$a=\dfrac{dv}{dt}$ ですから、この両辺を $\int{dt}$ します。
$$\int{a}dt=\int{dv}$$
より、加速度が一定であるとすれば $C$ を積分定数として、
$$at+C=v$$
$t=0$ のとき、$C=v_0$ とすると、
$$v=v_0+at$$
となります。
これをさらに、 $\int{dt}$ します。
$$\int{v}dt=\int{(v_0+at)dt}$$
$x=\int{v}dt$ なので、やはり積分定数を $C$ とすると、
$$x=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2+C$$
$t=0$ のとき、$x=0$ とすると、$0=0+0+C$ より、$C=0$ ですから、
$$x=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2$$
微分してみます
$x=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2$ の両辺を $t$ で微分してみましょう。
そうすると、
$$v=\dfrac{d}{dt}x=v_0+at$$
加速度の意味をしっかり理解できていれば、微積を使うことで、覚えることはほぼありません。
まとめ
等加速度直線運動
$v=v_0+at$
$x=v_0t+\dfrac{1}{2}at^2$
$v^2-v_0^2=2ax$
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