交流のRLC並列回路について、インピーダンス、位相、などについて詳しく解説しています。
RLC並列回路 交流の基礎6
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RLC並列回路
図のような、抵抗 $R$、 コイル $L$、コンデンサー $C$ からなる並列回路を考えます。この回路全体のインピーダンス $Z$ は次の式になります。
$Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}}$
また、回路全体にかかる電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して、
回路全体を流れる電流 $I=I_0\sin (\omega t + \phi) $ とすると、
$\tan \phi = \dfrac{ \: I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}} = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
これらは RLC直列回路と比べてみると、それぞれの値をひっくり返したものになっています。
抵抗やリアクタンスも逆数にし、引く順番も逆。
RLC直列回路
$Z=\sqrt{R^2 + \left(\omega L \:-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2 }$ $\tan \phi = \dfrac{\:\omega L \:- \dfrac{1}{\omega C}\:}{R}$
RLC並列回路
$Z=\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}}$ $\tan \phi = \dfrac{\:\omega C\: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
前回の直列回路(その1、その2)では直列のため、全ての素子に流れる電流は共通で同位相でした。
今回の並列回路ではそれぞれの素子に流れる電流は異なりますが、並列のため、電圧は共通で同位相になるはずです。
したがって、電圧を初期位相 0とし、 $V=V_0 \sin \omega t$ とおきます( $V_0$ : 最大値)。
それぞれの素子(抵抗、コイル、コンデンサー)を流れる電流を
- 抵抗 ・・・・・・・・・・・ $I_R$
- コイル ・・・・・・・・・ $I_L$
- コンデンサー ・・・ $I_C$
とします。
電源を流れる電流を $I$ とすると、キルヒホッフの第1法則から
$I=I_R+I_L+I_C$
となります。
注意ですが、各素子を流れる電流には位相の差があるため、
最大値・実効値を考えたときに単純に、
$I_{0}=I_{R0}+I_{L0}+I_{C0}$
$I_{e}=I_{Re}+I_{Le}+I_{Ce}$
とはなりません。( $I_{\ast 0}$ : 最大値 $I_{\ast e}$ : 実効値)
これはグラフを見れば明らかです。
抵抗・コイル・コンデンサー に流れる電流
位相差
各素子を流れる電流を考えます。
各素子に共通の電圧がかかりますからそれを $V=V_0\sin \omega t$ とした場合、電圧と電流に関しての位相のずれから、各素子を流れる電流は次のように書けます。
- 抵抗 $R$ を流れる電流 $I_R$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ と同位相
$I_R=I_{R0} \sin \omega t$ - コイル $L$ を流れる電流 $I_L$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れている
$I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$ - コンデンサー $C$ を流れる電流 $I_C$ は、電圧 $V=V_0\sin \omega t$ に対して $\dfrac{\pi}{2}$ 進んでいる
$I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
電流のグラフ
ここで各素子を流れる電流を縦軸に、時間を横軸にとったグラフを描きます。
電圧を $V=V_0\sin \omega t$ としたとき、各素子の時間 $t$ に対する電流の値はそれぞれ、
-
- $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
- $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$
- $I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
です。
この $\dfrac{\pi}{2}$ の位相のずれとは、参考円において互いに 90° の角度差をもっているということです。
したがって、参考円での次の図のような等速円運動を考えます。
その際に、各参考円の半径は各素子に流れる電流の最大値( $I_{R0}$ $I_{L0}$ $I_{C0}$ )となります。
これらのベクトルが図のように位相差を保ちながら、等速円運動している状態を考えます。
(注:ここでの図における各電流の大きさは適当です。図ではコンデンサーを流れる電流 > コイルを流れる電流 となっています。)
ここで、ある時刻 $t$ における回路全体を流れる電流を示すものは、参考円において各素子を流れる電流を合成したもの(図の赤色の部分)に等しくなります。
$I=I_R+I_L+I_C$
インピーダンス
コイル $L$ とコンデンサー $C$ の位相差はちょうど $\pi$ です。
イメージをつかみやすくするために、回転して次の図のようになったときを考えます。
求める $I$ の大きさは図で、
ピタゴラスの定理から
$I^2_{0}={I_{R0}}^2+(I_{C0 } \:- I_{L0})^2$
$I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$
となります。
さて、ここで各素子のオームの式
- $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
- $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
- $I_{C0}=\omega CV_0$
であることから、これらを $I_0$ の式へ代入します。( $V$ は RLC に共通です)
$I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$
$~~~~=\sqrt{ \left ( \dfrac {V_0}{R} \right )^2 + \left( \omega CV_0 \: – \dfrac{V_0}{\omega L} \right)^2 }$
$I_0=\sqrt{\dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_0$
実効値の場合も同様に考えて、
- $I_{Re}=\dfrac {V_e}{R}$
- $I_{Le}=\dfrac{V_e}{\omega L}$
- $I_{Ce}=\omega CV_e$
- $I_{e}=\sqrt{{I_{Re}}^2+(I_{Ce} \:- I_{Le})^2}$
- $I_e=\sqrt{ \dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_e$
ここで、$\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}} = Z $ とおきます。
そうすると、
- $I_0=\dfrac{V_0}{Z}$
- $I_e=\dfrac{V_e}{Z}$
となり、オームの式 $I=\dfrac{V}{R}$ と同じ形です。
そこで、この $Z$ を交流回路における抵抗をあらわす値と考え、$Z$ をインピーダンスと呼ぶことにします(単位 $\Omega$ )。
位相差
今回は、電圧を $V=V_0 \sin \omega t $ としています。
回路全体にを流れる電流は、電圧との位相のずれを $\phi$ として、
$I=I_0\sin (\omega t + \phi) $ と考えられます。
電圧 $V$ の位相と抵抗を流れる $I_{R}$ の位相は等しいため、図の角度 $\phi$ が電圧 $V$ に対する、回路全体を流れる電流 $I=I_R+I_L+I_C$ の位相のずれを示していることになります。
図では位相差を比較するために、
電圧 $V$ と電流 $I$を同時に描いています。
これは単に位相について比較するためです。
図より、RLC並列回路にかかる電圧 $V$ と回路全体を流れる電流 $I$ の位相差 $\phi$ は、
$\tan \phi = \dfrac{ \: I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}}$
$~~~~~~~~~ = \dfrac{\: \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
となります。
- $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
- $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
- $I_{C0}=\omega CV_0$
を使いました。
注意:これらは RLC並列回路の式です。
LC並列回路 RC並列回路 RL並列回路
- LC並列回路
さて、RLC並列回路において、抵抗 $R$ がない場合はどうなるでしょうか。その場合は、単に式から抵抗に関する部分を消去すればOKです。
$Z = \dfrac{1}{\sqrt{\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}} $
$~~~= \dfrac{1}{\left | \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right |}$
この場合の位相は、$\omega C$ と $\dfrac{1}{\omega L}$ の大きいほうを向きます。
もし $\omega C$ と $\dfrac{1}{\omega L}$ が同じ大きさのときはインピーダンス $Z$ が $\infty$ になり、電流が流れません。これについては共振の記事で解説します。
同様に
- RC並列回路
$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C \right )^2}} $
- RL並列回路
$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}} $
まとめ
抵抗を流れる電流 $I_R$ コイルを流れる電流 $I_L$ コンデンサーを流れる電流 $I_C$ とする。
各素子を流れる電流の最大値と実効値をそれぞれ以下の式で示す。
- 回路全体・・・・・・最大値 $I_0$ 実効値 $I_e$
- 抵抗・・・・・・・・・・最大値 $I_{R0}$ 実効値 $I_{Re}$
- コイル・・・・・・・・最大値 $I_{L0}$ 実効値 $I_{Le}$
- コンデンサー・・最大値 $I_{C0}$ 実効値 $I_{Ce}$
RLC(LCR)並列回路においては、回路全体にかかる電圧を $V=V_0\sin \omega t$ とした場合、各素子を流れる電流は
- $I_R=I_{R0} \sin \omega t$
- $I_L=I_{L0} \sin (\omega t \: – \dfrac{\pi}{2})$
- $I_C=I_{C0} \sin (\omega t + \dfrac{\pi}{2})$
- $I_{R0}=\dfrac {V_0}{R}$
- $I_{L0}=\dfrac{V_0}{\omega L}$
- $I_{C0}=\omega CV_0$
- $I_{Re}=\dfrac {V_e}{R}$
- $I_{Le}=\dfrac{V_e}{\omega L}$
- $I_{Ce}=\omega CV_e$
$I=I_R+I_L+I_C$
- $I_{0}=\sqrt{{I_{R0}}^2+(I_{C0} \:- I_{L0})^2}$
- $I_0=\sqrt{\dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_0$
- $I_{e}=\sqrt{{I_{Re}}^2+(I_{Ce} \:- I_{Le})^2}$
- $I_e=\sqrt{ \dfrac {1}{R^2} + \left( \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \right)^2 }\:\:V_e$
この $Z$ を交流回路における抵抗成分と考え、インピーダンスと呼びます。
$I_0=\dfrac{V_0}{Z}$
$I_e=\dfrac{V_e}{Z}$
$ Z = \dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{R^2}+\left ( \omega C – \dfrac{1}{\omega L} \right )^2}} $
RLC並列回路にかかる電圧と回路全体を流れる電流の位相差 $\phi$ は、
$\tan \phi = \dfrac{ \: I_{C0} \: – I_{L0 }\:}{I_{R0}} = \dfrac{\: \omega C \: – \dfrac{1}{\omega L} \: }{\dfrac{1}{R}}$
RLC直列回路・RLC並列回路 ともに基本をしっかり理解できればおそるるに足りません。
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